サイズパフォーマンスも
ワットパフォーマンスも高い
消費電力を論じる前に、R9 Nanoでウイッチャー3を30分連続プレーした時のGPU温度とクロックの推移をチェックする。温度計測は「HWiNFO64」を使用した。
また比較の参考として、前回Fury Xを検証した際のデータも再掲する。ただし前回と今回では検証環境が異なるため厳密な比較にはならない、という前置きをしておく。
今回のテスト環境はバラック組みであるため、PCケースに入れるともう少し温度が上がる可能性はあるが、GPU温度の最大値は77度、安定値は75度。これは前述のAMDの主張通りといっていいだろう。
ただ注目したいのは温度ではなくGPUのコアクロックが小刻みに動いているという事実だ。温度やGPUの消費電力などでクロックをマメに上下させるGeForce(GPU Boost 2.0)と違い、Radeonは負荷をかけるとクロックが一気にトップスピードまで上がり、そこからほとんど動かない、というのがこれまでの常識。
しかしR9 Nanoでは常時クロックが変動し、911~944MHzでほぼ安定する。定格である1000MHzに到達したのはほぼ一瞬、発熱を抑制するため常時クロックダウンして動作するといっていいだろう。
スペック的にはR9 NanoはGTX980を圧倒してもいいはずなのに、R9 NanoとGTX980の性能が近いのは、ここに原因があると考えられる。
また、マザーから40cm上の地点に騒音計「AR815」を設置し、ゲーム中のファンノイズを計測したところ、およそ43.8dBA。シングルファン搭載のRadeonにしてはかなり静かだ(暗騒音は約35dBA)。
しかし今回テストしたR9 Nanoは動作中のコイル泣きが発生しやすいのが気になった。ゲームのロード中やタイトルなど、フレームレートが極端に高くなればどんなビデオカードでもコイル泣きは発生するが、R9 Nanoはウィッチャー3プレー中でも発生する。
コイル泣きの音量は小さく、ケースを閉めれば気にならない程度かもしれないが、同じカードサイズのGTX970と比較すると明らかに泣く。基板設計の面でもR9 Nanoには改善点が残されているようだ。
では最後にシステム全体の消費電力を「Watts Up? PRO」で計測する。システム起動10分後を“アイドル時”、3DMarkのFire Strikeデモ再生中を“高負荷時”とした。
GTX980がOCモデルであること、R9 Nanoは実質ダウンクロック動作である、という特殊なシチュエーションではあるものの、ワットパフォーマンスにおいてもR9 NanoはGTX980を上回った。
HBM採用で消費電力を下げ、TDP 175W動作可能な選別品を厳選し、さらにクロックの変動を積極的に行なうようチューニングした結果である。R9 NanoにかけるAMDの気合いの入れようがわかるというものだ。
→次のページヘ続く (総評:R9 Nanoこそ真のFiji)
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