この記事は「コルグのチューナーはケンカから誕生、歴代製品を技術者と振り返る」の続きです。合わせてご覧ください。
コルグ・チューナー開発陣へのインタビュー後編。前編では世界初の針式チューナー「WT-10」が発売された1975年から20世紀の終わりまでを振り返ってみた。その後、表示部は針からLEDや液晶に代わり、ギターやベースなど個別の楽器に特化したものが生まれ、より小型化して安価になっていった。
21世紀に入ってのエポックは、楽器に挟めば確実に音が取れるクリップ式のチューナーが主流になったこと。小型で軽いことから、アコースティックギターやウクレレのヘッドに付けっぱなしで使う人も多く、チューニング事情が大きく変わった。後編はそこからスタート。
クリップ式チューナー「AW-1」登場以降(2004年-)
―― そして最初のクリップ式チューナー「AW-1」が出ます。
肥後 それまでのギターのヘッドに付けるチューナーは、性能的にいまひとつだったり、大きくてごつかったり。それをどこまで小さく作れるのかということで。当時は小さくし過ぎなんじゃないかという意見もいただいたくらいです。
市川 もともとは管楽器用に作ったんですが、ギタリストにも使ってもらえたので、その次の「AW-2」からはギター用の「AW-2G」も作っていますね。
―― 僕はそのAW-2Gを2個買いました。
市川 私は設計を担当しました。
肥後 ソフトの担当は私です。
―― その節はお世話になりました(笑)。で、今はそのクリップタイプが主流になっていますよね。
肥後 あの形でチューナーが身近なものになったと思うんです。エレキだったらシールドを差して見なければならない。アコースティックギターだと、膝の上のような、安定しない場所において使わなければならなかった。それが、ヘッドに付けっぱなしで済むようになったわけです。
杉原 音を拾う方法は、それまでマイクかラインしかなかったんですが、ピエゾという振動を直接拾うセンサーを使うようになって、チューナーもガラッと変わりましたね。
―― センサーだけ別体で、ワイヤレスでメーター部分と接続する「Wi-Tune」という製品もありましたよね?
杉原 あれは画期的ですよ。自分ではライブで使うのにものすごく重宝していますから。
近藤 フルートの人なんかは、クリップタイプでは、どうしてもメーターの表示が見えない。あれは、そういった楽器でもチューナーが使えるようにということで作ったものです。
杉原 音を拾うにしても、音の出るところが遠すぎるので、じゃあワイヤレスにしようと。
―― それにしても、エポックメイキングな製品ばっかりですね。ソニーには歴代ウォークマンを展示している部屋があるんですが、コルグさんには歴代チューナーを飾ってある部屋とかないんですか?
近藤 良いアイデアですね。ぜひ作りたいです。
(次ページでは、「チューナーは1から全部1人で作れる」)
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