オラクルが日本に進出するのは自然な考えだった
一方で、新経済連盟での対談は、リラックスした雰囲気のなかで行われ、エリソン氏が所有する京都・南禅寺の何有荘の話や、日本で勤務した経験などのエピソードが披露された。また、同様に、ORACLE CLOUDWORLD TOKYO 2015での4人の国内IT企業トップとの会談でも、若い頃に日本に住んだときのエピソードに触れた。
エリソン氏は、「私は20代のときに、アムダールに勤務しており、日本で、富士通とIBM互換機の仕事に携わっていた。その頃、初めて京都を訪れ、日本庭園に感動した」としたほか、「その後、アンペックスに勤務していたときには、東京に住み、日立製作所に通ったことがあった。JRで茨城県日立市まで行くのだが、新幹線は英語の表記があっても、こちらの路線には英語表記はなかった。初日には遅刻をしてしまい、日本の企業に勤めるものとしては許されない大失態を犯した」などと振り返った。
さらに、日立の野球チームに所属したり、パンポンと呼ぶ茨城県日立市ならではのスポーツに講じた思い出話も披露した。
こうした経験が、オラクル設立の早い時期に、日本法人を設立した理由になっているとする。
「オラクルが日本に進出しようと考えたのは自然だった」とエリソン氏。日本オラクルは今年10月に30周年を迎えることになる。
珍しく「何有荘」について語る、エリソン氏
公式イベントでは、自らが所有する何有荘での過ごし方についてはあまり言及したことはなかったが、昨年9月、CEOから退いた気持ちの変化もあったのか、今年は2つのイベントを通じて、このあたりの話にも時間を割いていたのが印象的だった。
「京都出身の技師を使って、庭を作り、移転できるようになるまで14年間かかった」とする何有荘では、「安心感を求めて、落ち着きを感じたいとき、謙虚な気持ちになりたいときに、京都に行っている。年に何度か、京都を訪れている」と明かした。
「ここでは、庭園の美しさよりも、私がそれをどう感じることができるかが大切。日本庭園は、水の流れる音や風の音、眺め、香りが、安心感を与え、生命感を感じ取ることができる。私は、普段は、世界に出て競争しており、安全ではない生活を送り、リスクを背負っている。水の音、早朝の鳥のさえづり、肌に湿度を感じることで、安心感につながる。日本に来ると、『モノの哀れ』というものに触れることができる。すばらしいものも、一瞬にしてなくなってしまうということを理解できる。一日一日を宝のように大事にし、なにかを達成しなくてはならないという気持ちになる」とも語る。
何有荘の日本庭園は、庭師である七代目・小川治兵衛氏による近代的日本庭園の代表。エリソン氏には不可欠な「場所」のようだ。
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