努力のたまものと自賛する国内生産の強みとは?
富士通 ユビキタスプロダクトビジネスグループ長の齋藤邦彰執行役員常務は、「10分の1の人件費で生産する中国に対抗するため、毎年10%ずつコストダウンを図ってきた。富士通アイソテックは努力のたまもの」と評価する。
富士通アイソテックの岩渕社長は、富士通のものづくり推進本部長などを歴任した経験を持つ、いわば、ものづくりのエキスパート。そのノウハウが現場で生かされているともいえるだろう。
国内生産ならではの柔軟性が売り
もうひとつのポイントは、国内生産ならではの柔軟性を生かしたカスタマイズ対応だ。
富士通では、「カスタムメイドプラスサービス」を提供している。それを実現する仕組みが富士通アイソテックのなかで構築されている。
カスタムメイドプラスサービスは、ユーザー企業の要求にあわせて、業務ソフトのインストールや、BIOSおよびドライバなどのセットアップ、利用者ごとの個別環境の設定、ユーザー企業のロゴなどの天板への印刷、本体に貼付する管理ラベル作成、梱包を簡易化するリターナブル集合梱包などを工場内で行い、ユーザー企業に出荷するという仕組みだ。
企業の情報システム部門では、大量のPCを一括導入する場合に、使用するソフトウェアをそれぞれのPCにインストールしたり、個別設定するといった作業に多くの手間がかかっていた。
だが、富士通アイソテックの生産時点で、インストールや設定を完了。現場ではPCの設置だけを行うことができるようになる。
富士通アイソテックのE棟2階フロアの一角に、システム構築センターを設置。企業ごとの個別情報を扱うために、特定の作業者しか入れない仕組みとし、カスタムメイドプラスサービスに関する作業を行っている。
ユーザー企業にとっては、設置時間や、それに関わる工数コストの削減が可能になるというわけだ。そして、PC導入までにかかる時間や、PCの迅速な稼働に直結するというメリットもある。
これも国内生産だからこそ実現できる柔軟な対応であり、カスタムメイドプラスサービスを利用する企業は、増加傾向にあるという。
島根と伊達の二重体制で、災害が起きても事業を継続する
さらに、生産における柔軟性という意味では、島根富士通との連携によるBCP(事業継続性)対応も見逃せない。
現在、富士通アイソテックで生産しているデスクトップPCは、島根富士通でも生産できるようになっている。これは逆のパターンにも応用できる。
実際、2011年3月の東日本大震災では、富士通アイソテックが被災。震災発生から12日後には、島根富士通でデスクトップPCの代替地生産を開始した実績もある。
「生産管理を行う情報システムは、もともと同じものを活用していたが、細かいところでは独自性があるものをお互いに採用していたため、相互に生産ができないという問題が発生していた。そこで、BCPを実現するために情報システムを見直し、いまでは定期的にお互いの製品をそれぞれに生産するという検証活動も行っている」(富士通アイソテックの岩渕社長)という。
特例とはいえるが、富士通アイソテックで生産したノートPCが市場に流通する可能性もあるというわけだ。
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