手前味噌だが、2月26日に筆者による「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」(星海社新書)という新書が発売された。
この本では、現在の不可思議な中国のインターネットが、どうやってできたのかを振り返り、書いている。中国のインターネットニュースを時系列で、ジャンル別で分けて起きた事実を書いていったので、未来予想については書いていない。
しかしながら、ここで本では書かなかった、中国がインターネットで目指すであろう事柄について予想していこうと思う。
中国の基本スタンスは「言論の封じ込め」
まず中国のインターネットといえば、ネット規制を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。今のところネット規制の目的は、簡単に言ってしまえば「反政府的な中国人の言論を封じ込める」ことにある。
そのために、サイバー万里の長城(Great FireWall、略称GFW)を作り、FacebookやTwitterやGoogleやYouTubeなどにアクセスできないようにした。今年に入って、GFWを越えてこれらサイトをはじめとした外国のサーバーにアクセスするためのVPNも、一部サービス利用もできなくなれば、サービス購入もできなくなり、規制は一層強まった。
しかしながら、在中国の日本人や外国人は平常通りTwitterやFacebookで日々つぶやいているように、中国のネットユーザーが中国から発見しにくいVPNサービスについては規制しないというお目こぼしをしているようだ。
また、年末に中国からGmailへのアクセスができなくなったが、Gmailにアクセスできた頃の攻撃を見ると、反中国政府的な中国人のアカウントのハッキングが目立った(企業へのハッキングもあったが)。1月にもマイクロソフトのOutlookサーバーへの攻撃が中国からあったが、やはり同様に反中国政府的なアカウントを狙ったものであった。
中国のネット規制では、最初からFacebookやYouTubeなどが使えなかったわけではない。2009年の新疆ウイグル自治区における騒乱のときにFacebookやTwitterをシャットアウトした。
最近ではウイグル自治区でスマートフォンや携帯電話を買うのにも身分証明書が必要になるというニュースを聞くし、しばしば「YouTubeは新疆ウイグル自治区などでのテロを助長する敵対勢力」と政府関係者が語っているように、ネット規制は新疆ウイグル自治区での事件を発端に強化される。
IS(イスラム国)が行なったような、動画やSNSにより、同調者を募集をかけることは、すぐにアカウントや書き込みが削除されることから、不可能だろう。
脱線するがFacebookは、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏の妻が中国系であることもあり、中国市場にラブコールをかけているが、ありのままのFacebookで入ることはありえない。
仮にFacebookが中国で運営を許可されたとするなら、閉じた中国国内しか繋がらない、検閲がかけられたものになる。すでに微信(WeChat)はもちろん、Facebook似の人人網(renren)の利用者が億単位いる以上、あえて知人が登録していない世界的サービスを登録しに行くとも思えない。
(次ページに続く、「独自OSへ突き進む中国」)
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