業界人の《ことば》から 第117回
Hitachi Innovation Forum 2014 TOKYO:
社会貢献するなら、儲からないといけない──日立CEO
2014年11月11日 09時00分更新
いまでも電力が使えない人たちは全世界で13億人
たとえば、エネルギーや水・資源については、「いまでも電力が使えない人たちは全世界で13億人に達している。また地球の直径は1万3000kmだが、淡水だけを集めた直径はわずか400kmしかない」と語り、「そうした世界的課題解決において、日立グループの技術が活用されている」とする。
エネルギーでは、英グレーターマンチェスターにおいて、地域の電力需給にあわせたエネルギー制御を行うスマートコミュニティ実証事業に参加。エネルギーの低炭素化とエネルギーの適正価格維持という点で具体的な成果があがっているほか、ハワイでのエネルギーシステムにおける実証実験では、2030年に総発電量の40%を再生可能エネルギーにすることを目指しているという。また、水・資源については、インドやイラクにおいて、インテリジェントウォーターシステムを導入。淡水化による水資源の有効を行っている例をあげる。
日立は首都圏の列車運行を24時間支えている
一方で、先進国における都市、交通でも日立は貢献している。その一例が、JR東日本の「東京圏輸送システム(ATOS)」である。
中西会長兼CEOが、「20年前には、私自身がこのシステムのプランナーであった」とするATOSは、首都圏全域の確実な列車運行を24時間支えている交通インフラシステムだ。
ATOSでは、コンピュータで作成された列車ダイヤを必要な装置に計画的に配信するダイヤ管理機能、指令で入力した列車ダイヤの変更をリアルタイムで駅に配信し、列車の制御や駅の案内表示に反映する運転整理機能、あらかじめ入力された列車ダイヤに基づき、信号機と分岐器(ポイント)を自動的に制御する自動進路制御機能、列車ダイヤに基づき、駅の放送や発車標(電光掲示板)に列車の到着時刻や行き先を表示し、ダイヤ乱れ時にも対応する旅客案内機能、1日1000件にも達する線路保守作業等の計画を管理。作業中の区間への列車の進入を抑止し、作業員の安全を確保する保守作業管理機能で構成される。
「ATOSは、25年前から検討を行い、20年前から徐々に導入してきたもの。首都圏全域の列車運行を、安全で、安心できるものにしている」とする。
このシステムの最大の特徴は、自律分散システムであるという点だ。
「首都圏の19路線約300駅が、それぞれにITを活用して相互に相談して、列車を安全に運行しているのがATOSの特徴。それぞれが自律的に動き、全体が連携しながら、課題を解決している」
中西会長兼CEOは、この仕組みを共生自律分散と呼び、「社会イノベーション事業の進化において、共生自律分散は、これからの重要なキーワードになる」と位置づけた。
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