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山谷剛史の「アジアIT小話」 第85回

中国独自仕様!? 謎のPC用拡張ボードを振り返る

2014年10月30日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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情報漏えいをハードウェアで防ぐ
「隔離カード」

「隔離カード」は手動のスイッチでドライブが変えられる製品もあった

 前述したようにWindows 98以前は、PCがあるのは役所や大学、研究所などだった。そうしたことから、中国政府はPCからインターネット経由で機密文書が漏れないための新ルール「関于加強政府上網信息保密管理的通知」を発表した。

 この4号規定では、政府内の機密情報を漏らさないために「機密データを公衆ネットワークに繋がるPCに保存してはならない」「そのため公衆ネットワークと内部の機密ネットワークは物理的に切り離されていなくてはならない」ということが決まった。

 そこで登場したのが「隔離カード」という拡張ボードだ。隔離カードは中国の複数メーカーから登場し、今も発売されている。

 隔離カード上には複数のSATAポートとLANポートがあり、基本的に2台の起動用HDDと2つ以上のネットワークに接続する。ひとつのHDD上のWindowsを利用している時に、添付の切り替えソフトを使用することで、使用中のWindowsがスリープし、もう一方のHDDに入ったWindowsシステムのスリープが解除される。つまり、隔離カードとは内蔵のハードディスク&LANセレクターなのである。

 各メーカーは隔離カードの正しい使い方として、機密ファイル入りHDDとイントラネット接続をセットにし、インターネットに繋ぐ際はもうひとつの機密ファイルが入ってないHDDと接続することを提唱している。

 ただ、さまざまなテスト環境を用意するのに利用価値があるのか、現在もPCIバス用とPCI Expressバス用の隔離カードが売られている。PCIバス用は150元(2600円ほど)から、PCI Expressバス用は200元中盤(4000円前後)から発売されている。

PCを一斉リストアできる「還原カード」「保護カード」

「還原カード」は手軽な価格で中国製チップを採用するものも多かった

一部の還原ボードには国家重点新産品の文字が

一部の還原ボードには国家重点新産品の文字が

 ネットカフェや大学のコンピューター室のPCには、しばしば設定したOSの復旧を行なってくれる「還原カード」ないし「保護カード」と呼ばれるボードが挿さっている。

 ボード上には中国製ROMが載っているだけのシンプルなつくりで、PCの起動時にまずROM内の処理を実行し、設定して保存したHDDのMBR(マスターブートレコード)をリストアする。

 最近では単体のPCにとどまらず、ネットワークでつながったPCの一斉リストアにも対応。さらに各PC端末のリモートコントロール機能を搭載したLANコネクター付きの還原・保護カードが登場。コンピューター室で導入しようとする学校のニーズが高まった。

 このように中国ではさまざまな独自の拡張ボードがリリースされ、今も一部は販売され続けている。アキバのパーツ情報でワクワクが満たせないなら、中国の電脳街でこの手の製品の人柱になってみるのもアリかもしれない。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)。

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