Bluetoothで演奏する時代に?―「MIDI over Bluetooth LE」
音楽はAppleのDNAのとても重要な部分であり、それはこれからも変わる事はありません ― これは、Beats買収の際のプレスリリース(邦訳)に書かれていた一文だ。Beatsに投じた総額30億ドル(約3060億円)という巨額の投資にしても、これまでのiTunesやiPod、あるいはiOSデバイスにおける音楽関連機能への姿勢からしても、そこに書かれていることは行動で示されているといっていい。
だから、基調講演では触れられなくても何らかの新機能はあるだろうと考えていたところ、やはり音楽関連のセッションでいくつか重要な新機能が語られていた。ここでは、そのうちCore Audioに実装される「MIDI over Bluetooth LE」を取りあげてみたい(Bluetooth LE/BLEの仕様に関する情報は、Bluetooth SIGのドキュメントや「Bluetooth Low Energy: The Developer's Handbook」を参照)。
今やワイヤレスに対応している音の出口(スピーカーやヘッドホン)は珍しくないが、楽器など音の入口はいまだワイヤードが主流だ。マイクなど一部のデバイスはすでにワイヤレス化が進み、ステージや放送の現場で活用されているが、統一された規格はない。Appleはそこに着目したのか、「MIDI over Bluetooth LE」というコンセプトをiOS 8/OS X Yosemiteで実現する。
基本的な仕組みは下図のとおり。Macに用意したUSB-MIDIインターフェースに各種MIDIデバイスがぶら下がるのは従来どおりだが、そのMacが“ハブ”となり、iOS 8/OS X Yosemite上で動作するシーケンサーなどMIDI対応アプリとBluetooth LEで接続、リアルタイムにMIDIデータをやり取りするというものだ。なお、OS X Yosemiteに付属のAudio MIDI設定には、Macを他の機器と接続しMIDIデバイスとして使用するためのBluetoothオプションが用意される。
電子楽器ではレイテンシの程度(この場合、人間の操作と音の出るタイミングにずれが生じること)が重要だが、公開されたセッションムービーでは「実に低遅延(really low latency)でセンシティブ」だという。MIDIの信号は31.25Kbpsと低速なものの、「スペック上は物理層で1Mbpsをうたわれているが、実際には10〜20Kbpsを確保できればいいところ」というBLEの帯域幅で足りるのかどうか。いずれにせよ、楽器という人肌感覚で扱うデバイスなだけに、実物の登場を待たねばならないだろう。
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