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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 ― 第41回

セルフパブリッシングの未来(1)

同人小説で食べていく――野田文七さんの場合

2014年04月26日 15時00分更新

文● まつもとあつし

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電子書籍の売上は、紙の10分の1以下

―― 現状は電子書籍としての販売は行なっていないんですか?

野田 「『メロンブックス DL』などを利用していますが、やはり売上は10分の1以下ですね。価格は紙の本の半額に設定しているのですが、イベント会場やお店での“勢いで買う”ということが電子の世界では起こっていないのかなという感じがあります。あとは、同人誌の“手作り感”が電子だと感じにくいということではと思います」

メロンブックス DLで電子書籍版も販売しているが、売上は紙の10分の1以下だという

―― 作品を読んでいると、書く力は十分に備えていらっしゃると感じるのですが、小説賞へのエントリーや、編集部への持ち込みは行なわないのでしょうか?

野田 「考えたことはあります。でも、正直努力に対するパフォーマンスがどうかなと。歴史物なので、図書館に通い詰めて史料を読み込んだりもしていますので。

 つまり、好きに書いて出せば300から500部は売れて読んでもらえる、でも、小説賞にエントリーしたり――実際、働きながら賞に応募したことはあったのですが――編集部へ持ち込んでも、いろいろ文句を言われて、それでもそこから先に拡がらない可能性の方が高い。商業出版は印税しかもらえないけれど、同人であれば原価以外は自分の取り分にできる。であれば……という感じですね」

頭を悩ませるのは出版社同様
価格と部数の設定&増刷タイミング

野田 「内容が盛りだくさんなこともあって、上中下巻にまたがる長編(1巻1000円)になるのも、この分野では割と珍しいのかなと思います。もちろん長編ですと読むのも大変ですし、どうしても巻を重ねると売れる数が少なくなっていきますから、内容ももう少しシンプルで約100ページと短めの単巻もの(1部500円)も出していたりもします。

 同人イベントなどで初めて手に取る人が躊躇しないくらいの分量かなと。マンガと違って、パラパラっとめくっても様子が分かりませんからね(笑)」

―― 本の質感や見た目は書店に並んでいる本と変わらないですね。価格は若干高めに設定している?

野田 「後ほどお話しする制作原価を考えるとこのぐらいになりますし、同人イベントで小銭のやり取りが発生しない価格に設定しています。また、装丁のしっかりした本は2000円になることあります。

 同人イベント以外では、メロンブックスさんなどで委託販売もしています。作家さんによってさまざまなのですが、僕の場合は委託販売手数料(3割)は価格に上乗せする形で販売させていただいていますね。イベントに足を運んでいただいた方は、少し安めに買える、という考え方です」

長編の場合、後に出る巻ほど売上が落ちるため、部数設定や増刷タイミングには頭を悩ませるとのこと

―― なるほど。これまでどのくらい売れているんですか?

野田 「それぞれ300~500部くらいですね。シリーズものはどうしても巻が進むごとに売れる部数も減っていくのですが、そうすると在庫の管理、例えば2巻目だけが売り切れてしまったときにどれくらい追加で印刷・製本すればいいのか、結構悩ましかったりします」

―― なんだか出版社の「増刷するか否か、何部刷るか」のような悩みを味わっているわけですね(笑)。

野田 「そうですね、規模はまったく違うと思いますが(笑)」

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