このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第14回

キャラ別再生数ベスト5は初音ミク、GUMI、結月ゆかり、鏡音リン、IA

データでみる2013年ボカロ人気キャラ事情

2013年11月21日 11時00分更新

文● myrmecoleon

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

この連載では、独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画の現在を紹介していきます。今回は以前も取り上げた「VOCALOID」タグをさらに詳しく調べてみました。連載一覧はこちら

筆者紹介:myrmecoleon

 明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2013』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
 Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

■Amazon.co.jpで購入

ボカロ人気は衰退しました?

 連載第1回でも紹介した「VOCALOID」はヤマハの開発した歌声合成ソフト。現在「VOCALOID」タグの動画は29万動画ほどが存在します。2013年は初音ミクV3の発売などがありニュースが多かった一方、昨今ではボカロ人気は衰退したのでは? というような声も聞かれます。

 今回はさらに掘り下げ、特にVOCALOID周辺の音声合成のキャラクターの様子に注目してご紹介します。

 とりあえずいつもの投稿数・新規投稿者数のグラフから。2009年以降は年々投稿数の増加が加速していたのが、月毎の上下は大きいものの、今年はおよそ2012年と同規模となる見通しです。その他動画・動画投稿者の傾向等は第1回で紹介したものとほとんど変わっていません。

動画投稿数は左軸、新規投稿者数は右軸。2013年3月に急増したが、以降は前年並みの規模で推移している

 ところで、今年になってから「ボカロ人気は衰退した」という話が何度か出ており、動画投稿者の感覚として再生数が伸びづらくなった、というような話をしばしば聞きます。実際どうなのでしょうか。

 人気という言葉を数字に置き換えるのは難しいですが、ニコニコ動画上の人気としては動画の再生数は比較的実情を反映したものになると思われます。また他の指標のコメント数・マイリスト登録数についても、大きな規模ではおおむね再生数に比例した数字となります。

 VOCALOIDタグは2009年末からカテゴリタグとなりました。あまり知られていませんがニコニコ動画ではカテゴリタグについてはその総再生数を毎時公開しています。自分はこのデータを2009年以前から収集しているので、これの各年毎の差分をとれば、一年間でVOCALOIDカテゴリの動画がどれだけ再生されたかがわかります(実際には削除等があるため誤差は出ます)。

 その結果がグラフ2ですが、これを見ると過去1年は2010年以降でもっともよくボカロ動画が再生されていた期間であることが分かります。ニコ動におけるボカロ人気をVOCALOIDカテゴリの動画の再生回数と置き換えるのならば、2013年は過去一番ボカロ人気の高い年となります。

データはニコニコ動画VOCALOIDカテゴリトップページで随時表示されていたカテゴリの総再生数の記録から前後の期間の差を出したもの。2009~2012年は各年11月23日早朝、2013年は11月15日時点の数字

 動画の再生数が伸びなくなったと言われる一方、ボカロ動画そのものは以前よりも見られているようです。この齟齬の原因はどこにあるのでしょうか?

 調べてみると“過去1年に投稿された”VOCALOIDタグの動画の再生数の合計はおよそ2億と、上記したVOCALOIDカテゴリ全体の過去1年の再生数の半数ほどでした。

 動画の数は年々蓄積され増加しているわけですから、ボカロ動画全体に占める新作動画の再生の比率は年々下がっていると予想されます。

 ボカロ動画の視聴者は増え、よく再生されているとしても、その半数は過去の人気動画に向かうわけですから、新しい投稿動画の再生数は以前と比べれば伸びにくくなるでしょう。

 ニコニコ動画では過去の名作も現在の新作も並んで検索され再生されます。そして過去の名作の比率は時間がたつほど確実に増えていきます。

 基本的に、長続きしているジャンルほど過去の名作との差別化が難しく、たとえ視聴者が増加していても必然的に以前と比べて伸びにくくなります。現在はそれがVOCALOIDの動画でも顕在化してきているのだと言えるでしょう。

もうひとつの合成音声ジャンル UTAU

 これまで紹介できませんでしたが、ニコニコ動画では歌声合成ソフトとしてはVOCALOIDの他にUTAUというソフトもよく使われています。こちらについても簡単に紹介しておきます。

 「UTAU」は飴屋氏が2008年に発表した歌声合成ツールです。VOCALOIDと同様に、メロディを打ち込むことで人が歌っているかのような音声を合成することができます。

 特徴としては初音ミクに相当するような音源のライブラリを自由に作成できることが挙げられ、自分の声などを自由にUTAU用のライブラリにすることができます。このため国内外の有志により現在までに少なくとも5000以上の音声ライブラリが公開されています。

 代表的な音源のキャラクターとしては「デフォ子」「重音テト」「桃音モモ」「波音リツ」などがあります。中にはセミの声や瓶のフタを開けた音など人間の声以外の音声による音源もあります。

 UTAUタグの動画は現在までに約9300名のユーザーにより6万5000個以上が投稿されています。投稿者の15%近くが海外のユーザーと非常に多いことが特徴です。

動画投稿数は左軸、新規投稿者数は右軸。2012年まで投稿数を増やしていたが、VOCALOID同様2013年は前年と同程度の規模に落ちついてきている

「UTAU」タグの基本データ
合計 中央値 参考:全体の中央値
再生数 6930万2640 318 526
コメント数 1007万5050 9 20
マイリスト登録数 232万1006 7 3
コメント率 - 2.82% 3.54%
マイリスト率 - 2.20% 0.87%
「UTAU」タグの投稿者データ(公開ユーザーのみ)
プレミアム会員の比率 41.01%
女性の比率 41.44%
国外からの動画投稿者の比率 14.42%
平均年齢 22.3歳

※コメント率・マイリスト率はそれぞれコメント数・マイリスト登録数を再生数で割った値。拙著同人誌『ニコニコ動画統計データハンドブック2013』より抜粋。2012年12月上旬調査時点の値。

2012年末にニコニコ動画上で投稿されているUTAU音源を再生数等からランキングした動画。UTAUの多様性や共有文化(この動画は公開されているUTAUの打ち込みファイルやイラストを利用して出来ています)を象徴した作品。というか自作。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン