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ハイパースケールデータセンターを実現する次世代のサーバー&ストレージ ― 第3回

質実剛健なローエンドストレージが商用クラウドを支える

性能と安定性でさくらが選んだNECの「iStorage M300」

2013年09月10日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●秋山泰彦

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さくらインターネットは、石狩データセンターに構築されたクラウド基盤においてNECのユニファイドストレージ「iStorage M300」を採用した。クラウドで求められる高い性能と安定性を実現すべく、同社が考える製品選定の条件について聞いた。

VPSで手応え!次の仮想サービスはクラウド

 「さくらのクラウド」は、さくらインターネットのIaaS型パブリッククラウドサービスで、省エネとコストパフォーマンスを追求した石狩データセンターのオープンと同時に発表されたものだ。簡単操作のコントロールパネルから、CPUとメモリを自由に組み合わせて仮想サーバーを構築。作ったサーバーとストレージを自由に接続したり、サーバー同士をつなげてネットワーク化することで、自分だけの仮想データセンターを構築できる。20日未満は1日あたり95円からの日割り料金で、20日以降は月額料金が適用されるというユニークな課金体系も大きな売りとなっている。

 さくらのクラウドのプロジェクトが立ち上がったのは、サービス開始から約半年前。代表取締役社長の田中邦裕氏からプロジェクトを任されたさくらインターネット研究所所長の鷲北 賢氏は、「さくらのVPSで仮想サービスに手ごたえを感じていたこともあり、『次はクラウドにチャレンジしよう』とプロジェクトが発足しました」と振り返る。

さくらインターネット研究所 所長 鷲北 賢氏

 鷲北氏は、田中氏が作ったオープンソースのプロトタイプを検証しつつ、仮想化基盤の開発をスタート。サーバーの仮想化に関してはVPSで実績のあった仮想化基盤のKVM、ネットワークの仮想化に関しては、研究所で構築した基盤を採用した。一方、課題はストレージだった。クラウドサービスにおけるストレージシステムの構築は、どの事業者も苦労しているからだ。

 クラウドサービスでのストレージの課題の1つは性能だ。専用サーバーと異なり、クラウドサービスでは複数の仮想マシンでストレージを共有する。そのため、I/O性能が絶対的に不足してしまうのだ。コントローラー自体やHDDの性能のボトルネックが直接サービスの品質に響いてくる。

 容量も大きな課題。HDDの場合、性能面を求めると、容量や価格などの面でバランスがとれないことも多い。また、商用ストレージ製品だとパリティやホットスペアなどの領域を思いのほか確保しなければならず、使用できる容量はかなり減る。もちろん、データの損失は絶対に避けなければならないため、RAIDに関してもリビルドに失敗する可能性がある方式は極力避ける必要がある。

 ストレージシステムの構築においては、こうした要件を確実に満たす各種の設定や製品選定が重要となる。当初は他ベンダーのNFSストレージを導入したが、サービスの設計・開発期間が短く、また、予想以上の加入申し込みがあったため、2011年11月のサービス開始以降、安定運用に向けてかなりの試行錯誤が続いたという。

テストができ、I/Oを読める製品を採用

 このような状況が続くことは、安定したサービス提供を行なうべきサービス事業者としては許されない。そこで、さくらのクラウドでは、性能と安定性を最優先にしたストレージへと大幅な見直しを行なった。とはいえ、仕様変更や選定に時間がかけられないため、まずはIAサーバーにディスクを搭載した自作のストレージをテストし、2012年の6月頃から本番環境に投入。これら自作ストレージの運用と並行し、より安定した運用に向け、ベンダーの製品を取り寄せ、3ヶ月かけて検証作業を進めたという。

 ストレージシステムの設計やテストを担当したさくらインターネット研究所上級研究員の大久保 修一氏が重視したのは、性能を担保することだ。これを実現するため、当初NFSストレージをベースにした複雑な構成を変え、iSCSIによるシンプルなシステムに作り直した。ファイルシステムであるNFSに比べ、IPでブロックストレージを実現するiSCSIはデータ送受信のパスがわかりやすい。

さくらインターネット研究所 上級研究員 大久保 修一氏

 大久保氏は、「以前利用していたNFSベースのストレージは、お客様が発行したI/Oリクエストが、ファイルシステムやキャッシュ、コピーオンライト機構を経由した後、最終的にどのようなHDDのアクセスパターンになるのかまったく想像できない状態でした。新ストレージシステムではそういった複雑性を排除し、“I/Oが読めるように”しました」と語る。そのため、ストレージに過度な負荷がかからないようサーバー側のI/Oスケジューラーを調整したり、ユーザーごとにリミットをかけたり、キャッシュを最小限に抑えることで、I/Oを全体的に最適化。ストレージの持っている性能相応のレスポンスをユーザーにきちんと返せるよう設計したという。

 こうしたシステムを前提に、大久保氏らはNECなどベンダー2社のiSCSIストレージで検証を行なった。コストパフォーマンスが高く、とにかくシンプルで堅実なストレージを求めたという。「SASのバス帯域が上限になるので、ユーザーごとの割り当て帯域を考えると、そこまで多くは収容できません。帯域と容量のバランスを取るため、HDD搭載数を絞る必要がありました」(大久保氏)。この結果として、おのずとローエンドモデルになったのも事実。「ローエンドモデルを商用クラウド環境で使う」というベンダーにとって不利な状況下で、厳しい検証作業を経て、最終的に導入にいたったのがNECの「iStorage M300」だった。

(次ページ、どんなリクエストにも音を上げないサポート力)


 

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