CPUが行なう処理を
チップセットが受け持つ
nForce 4 SLIに搭載された7つの機能のうち、TCP/IP Accelerationと、NVIDIA Gigabit Ethernetは2つでペアになっている。Gigabit Ethernetの方はあまり説明の必要はないだろう。今でこそごく当たり前のように実装されているGbEだが、2004年や2005年当時はまだ100Mbpsの100BASE-TXが普通であり、これが差別化の要因になった。
TCP/IP Accelerationの方はやや複雑だ。実はNVIDIAの日本語サイトにもまだこれに関する解説が残っており(関連リンク)、ここから“NVIDIA DualNet with Teaming Advanced Networking”なるホワイトペーパーが入手できる。
このホワイトペーパーでは2種類の技術、TeamingとTCP/IP Accelerationが説明されている。Teamingというのは下の画像のように、1つのマシンから2つのGbEポートを同時に利用して接続することで、帯域を2倍(2Gbps)にする仕組みである。一般にはこれは「トランキング」と呼ばれる技法で、あまりTeamingとは呼ばないのだが、それはともかく内容そのものは割と真っ当である。
ただしあまり普及していないのには訳があって、上の画像の構成だと中央に挟まっているスイッチングハブが、このTeaming(つまりトランキング)に対応していないと構成できない。スイッチングハブの価格は、今だとGbE対応でも5ポートなら3000円未満で入手できるし、2004年だともう少し高価だったが、それでも8ポート品が4万前後で入手できていたと記憶する。
ところがトランキング対応になると、今でも一番安い製品で1万2000円前後(関連リンク)。2004年当時だと8ポートのものが10万円弱である。通常のスイッチングハブの2~3倍もする価格のトランキング対応ハブをわざわざ買うユーザーはほとんどどおらず、結局このTeaming機能はいつの間にかカタログから消えてしまった。
もう1つのTCP/IP Offloadingというのは、下の画像のような仕組みである。御存知の方もおられようが、インターネットに使われているTCP/IPというプロトコルは「パケット」というデータの小さな塊の単位で管理される。1つのパケットのサイズはそれほど大きくないので、たとえばファイルのダウンロードなどをすると、猛烈な数のパケットに分割されて送り出されてくるので、受け取った側はこれを1個1個分解して中身を取り出す作業が必要になる。
上の画像で緑の部分は、「受け取ったパケットが壊れてないかをチェックサムを計算して確認する」(Hardware TCP/IP Checksum)と、「受け取ったパケットを、宛先(ウェブブラウザーなのかメーラーなのかメッセンジャーなのか)別に分類する」(Hardware Connection Lookup Table)と、「パケットを受け取ったという返事を返す」(TCP ACK)という、TCP/IPの中では比較的典型的な処理だが、普通はCPUがこれを行なうものだ。
ところがnForce 4ではこれをチップセットの側で行なってしまうので、CPUはそうした処理から開放されることで、処理負荷が減るというものである。このTCP/IP Offloadingについては、また後で触れたい。
最後がnTuneであるが、これはシステムのオーバークロック動作設定ユーティリティーで、後追いで追加されたものである。使ったことがある読者もいるだろう。
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