Explicit(形式知)とImplicit(暗黙知)
基調講演のなかで、遠藤社長は、直接的に入手が可能な情報をExplicit(形式知)とし、これらの情報から表面的には見えないデータを導き出したものをImplicit(暗黙知)と定義した。
ここでは、インドの都市化における課題を例にしながら説明をした。
インドの都市部では、地下水の枯渇という問題が起こっている。これは表面的な原因分析であり、即応的な対応に終始することになりがちだと指摘する。これを複合的な問題の深堀りにより、全体的視点で対応すると別の問題解決手法が浮き彫りになるという。
地下水の枯渇を取り巻くなかでは、不法井戸の乱立や過剰利用といった問題のほかに、漏水による水供給力の低下、盗水の横行といった問題も含まれる。突き詰めていけば、警察組織の不全や行政管理の不在が、本質的な課題として浮き彫りにされる。
これが、ImplicitとExplicitということになる。
遠藤社長は、さらにもう少しわかりやすい事例で、ImplicitとExplicitを説明する。
自動車の位置情報と、自動車のワイパーの使用有無や動作速度のデータを組み合わせると、どこでどのぐらいの雨が降っているか、時間とともに、どう雨雲が動いているのかがわかるという事例だ。自動車とワイパーのデータは、直接的に入手が可能な情報をExplicit(形式知)であり、雨雲の推移の状況はImplicit(暗黙知)ということになる。
「データを集めることで、違う意味合いが見えてくる。早くわかれば対策も打てる。これがビッグデータの面白さである」などとした。
ここで重視されるのが分析技術だ。
遠藤社長は、「NECは、世界トップレベルの分析エンジンを持っている」と前置きし、独自の分析技術をベースにしたインバリアント分析、異種混合学習、顔画像解析、行動分析、テキスト含意認識などを、分析サービスとして提供。さらに、これらを順次クラウドサービスとして提供することを示しながら、異種混合学習では、「オフィスにおけるPCの利用状況、働く社員数や性別、天気などをもとにして、1週間後の電力使用量を2~3%の誤差で電力予測ができる。予測ができれば、早い段階から対応が可能になる」などとした。
これも資源を有効に活用する「効率化」による第2の資源の実例だといえる。
この連載の記事
-
第588回
ビジネス
富士通の子会社でDX専門のコンサルティングをするRidgelinez -
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 -
第585回
ビジネス
日本市場の重要性を改めて認識する米国企業、変革期にある製造業がカギ -
第584回
ビジネス
NTT版の大規模言語モデル(LLM)、tsuzumiの商用化スタート、勝算は? -
第583回
ビジネス
エコ投資に取り組むエプソン、見方によっては10年で1兆円の投資も -
第582回
ビジネス
パナソニックコネクトの現在地点、柱に据えるBlue Yonder、ロボットとは? -
第581回
ビジネス
スタートして半年の日本NCRコマース、軸はAIとプラットフォームの2つ -
第580回
ビジネス
コンカーの第2章は始まるのか、SAPの生成AIを使って効率的な経費精算を -
第579回
ビジネス
AIの筋トレはいまから始めるべし、マイクロソフト津坂社長がCopilotの議論から得たもの -
第578回
ビジネス
大赤字からの再起はかるバルミューダ、その足掛かりは? - この連載の一覧へ