Twitterでメッセージを発し続けたわけ
―― 先ほど仰ったように、ご自身がTwitterで常にメッセージを発信し続けていることも重要だと思いました。既成概念を破るような新しい取り組みをするときには、受け手の作り手に対する信頼感が試されるように思います。
尾崎 「ああ、それは感じますね」
―― これまでその役目は監督や声優さんが負うことが多かったように感じます。プロデューサーが語るというのは、意外と例がないのかなと思いました。
尾崎 「かも知れませんね。僕もTwitterというものがなければ、いくつかのハードルは越えられなかったのかもしれません。
作品がヒットすれば、こうしてインタビューしていただけることもありますが、必ずしも自分がメッセージを発したいタイミングで(インタビューが)予定されているわけではないので」
―― そうですね。
尾崎 「やっぱり、そこはソーシャルメディアの力というか、Twitterやブログといった“自分で発信する手段”があるというのは、大きいですね。
ただ、『意外と例がない』と仰られた通り、これまで“スポットライトに当たる役目じゃない人間は、あまり前に出てはならない”という不文律的なものがあったのも事実です。
自分でものを語ったり表に出るのはいかがなものか、と言われるのはある意味宿命でしょうね。『プロデューサーは黒子じゃないか』と」
―― うーむ。
尾崎 「作品は監督なり役者さんをはじめとするスタッフ全員のモノなのだから、プロデューサーが目立つかたちで発言するのは本来あるべき姿でないと。僕もそう思います。ただ、監督をはじめ各役割を担う人間にしか話せないことがあるのと同様、プロデューサーにしか語れないこともあるんじゃないでしょうか。
僕は作品およびプロジェクト全体のスポークスマンとして、コンテンツそのものを1人でも多くの方々に楽しんでいただきたい一心で、なぜそのプロジェクト・商品・イベントをやるのかという理由や背景を語ることでプロデューサーの役割を全うしたいだけなんです」
―― 逆に、監督は映像作品そのものに対する責任や役割こそ大きいものの、劇場化や商品開発、海外展開そのものにはあまり関与していないはずですよね。
尾崎 「ちょっと変わったプロジェクト・商品・二次展開が発表されたときに、その意図をきっちり説明してもらえれば――それがファンの方々1人1人の腹に完全に落ちるかどうかは別問題ですが――少なくとも運営サイドの想いはわかりますよね。その安心感は、たぶん大きいと思うんですよ。
逆に説明がないと、本当に良いプロジェクトであっても、そっぽを向かれる可能性が出てしまいます。それはファンにとっても逸失利益たり得ると言っていいでしょう。情報はすべて受け取っていただいた上で、判断して欲しい。情報の提供義務があると思って(Twitterでの)発言を続けてきたつもりでいます。
でも、それだけの情報を提供して、面白そうだ、意義があると思って足を運んでいただいた上で、仮に面白くなかったら、それはもう狼少年になってしまう。だからこそ、裏切れないというプレッシャーは常に感じていますし、日に日にそれは大きくなっていますね」
―― それが、プロデューサーということなんでしょうね。
尾崎 「TIGER & BUNNY THE LIVEは、ファンである僕ががっかりしないキャスティングを実現するために、すべてかかわってJAEさんと共に選ばせてもらったので、当然納得感はあるし、熱意もファンに伝わったんだと思います。それがこれだけの応募数につながったんだろうなと」
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