半導体の微細化に貢献する
液浸とEUV
ところで前回の記事に書いた「ArF(フッ化アルゴン)レーザー+液浸露光技術」や「EUV」(極端紫外線露光技術)について、補足しておこう。
半導体の製造工程の中には「露光」という段階がある。その仕組みを簡略化したのが図1だ。まずウェハーの上に感光材料を塗っておき、そこに光源からマスクを挟んで光をあてると、マスクの穴の開いた箇所だけが感光する。これを使ってウェハー上に回路を焼き付けるというものだ。実際は露光の後にもいろいろな作業があるのだが、今回は割愛する。
露光光源として長らく使われてきたのは、ArF(フッ化アルゴン)というもので、波長193nmの光である。これをレーザーにして照射していたのだが、ご存知のとおり半導体製造プロセスが45nmや32nmへとどんどん微細化してきたことで、レーザーの波長より短いパターンを、ウェハー上に作らなければならなくなった。
これを実現するために露光装置メーカーはレンズを工夫したが、それでも間に合わなくなった。そこで2000年代後半から使われるようになったのが、「液浸露光技術」(液浸)である。これは図2のように、レンズとウェハーの間に液体を挟みこむ。この液体は屈折率が高いので、これによって波長よりも短いパターンでも露光させようという仕組みだ。
ところが微細化が進むと、液浸でも上手くいかなくなってきた。例えば図3のようなマスクを使う際に、本当は図3右上のようなパターンで露光したいのに、実際には図3右下のようになったりする。これはあくまで例だが、とにかく望みのパターンを作りにくくなっている。
この状況に対して、当面の対策として利用されているのが「マルチパターニング」である。図4のように、垂直方向のパターンと水平方向のパターンという2種類のマスクを用意して、2回露光することで望みの露光パターンを実現させようというものだ。ただしこの方式では、最近では1枚あたり数1000万~1億円近くするマスクが複数枚必要になるし、露光の時間もその分増える。
インテルの場合、以前16nmプロセスについて「ダブルパターニング(露光が2回)で済む」と説明していた。しかし14nmプロセスについては明確にしておらず、業界的にも14nmでは、「場合によってはトリプルパターニングが必要」と言われている。
これの解決策として、以前から検討されているのが波長の短い光を使うというアイデアである。「波長が長い(193nm)ArFを光源に使うから、液浸やマルチパターニングが必要になる。もっと波長の短いものを光源にすれば解決する」という話だ。
短い波長の最有力がEUV(Extreme Ultra Violet、極端紫外光)で、波長は13.5nm。光というよりも、すでにX線に近い。これを使えばマスクは1枚で済むし、これまでArF光源で培ってきたさまざまな補正技術も使えば、10nm未満のプロセスでも十分に対応できる……という理屈だ。
だがEUV露光が抱える最大の問題は、光源の出力が十分でないことである。露光にはそれなりに強い光がないと、十分に感光するための時間を、長めに取らなければならない。現在のEUV露光用光源は、最終的に量産段階で必要とされるものの10分の1程度の出力と言われている。ダブルパターニングが不要なことを考慮に入れても、ArF光源の場合に比べて5倍の時間が必要という計算になる。
微細化を進めるのはインテルだけでなく、AMDも現在の32nm SOIに続き、GLOBALFOUNDRIESかTSMCでの28nm、その先にはTSMCの20nmあたりが視野に入っているだろう。TSMCは「20nmまではおおむね順調であるが、続く14nmに関してはEUVが実用的にならないと難しい」としており、もし間に合わなければ14nmの前に、「引き続きArF+液浸の16nmプロセスを立ち上げるかもしれない」といった話をしている。EUVの問題がこのあたりに関わってくるのは間違いない。
幸いなのは、インテルは2013年末には14nmを立ち上げなければいけないのに対して、後を追うAMDはその前に28nm/20nmへの移行があるので、そこまで切迫していないことだろう。
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