AMDの1コアはインテルよりトランジスターが多い?
一方でCTIにあまり影響されないのが、総トランジスター数の変化だ(グラフ3)。こちらはプロセスの微細化にあわせて順調(?)に増加傾向にある。Bulldozerに関しては、2011年12月に「総トランジスター数を20億個から12億個に引き下げる」という発表があった。一次近似の直線(朱色の破線)で見ると、本来32nm世代なら15~16億程度になりそうな計算なので、おおむねこの範囲ということになる。
問題は、「これ以上トランジスター数を増やせるのか?」ということ。32nm SOIのままでトランジスター数を大幅に増やすのは、ダイサイズと消費電力の両面でかなりきつい。28nm世代まで行けば20億個位までトランジスター数が増やせるので、次の世代まではトランジスター数は増えないだろう、と想像される。
グラフ4は1コアあたりトランジスター数の概算である。冒頭で書いたとおり、今回はLlano/Trinityを入れていないので、計算式は以下のようになる。ちなみにAMDの場合は共有2次キャッシュを使わず、コアごとに独自の2次キャッシュが搭載されているが、一応これも外して算出した。
- (総トランジスター数-2次/3次キャッシュのトランジスター数)÷コア数
K7(Athlon)の世代は、おおむね2200万~2500万トランジスター程度で推移していた。これがAthlon 64以降で大幅に増えているのは、メモリーコントローラーやHyperTransportリンクの分が増えたからである。ではこれを除くとどの程度になるかは、実は90nmの世代だと比較的算出しやすい。
1ページ目の表1から関連項目を抜き出して見る。
- Orleans(1コア、2次 512KB):8100万トランジスター
- San Diego(1コア、2次 1024KB):1億1400万トランジスター
- Windsor(2コア、2次 1024KB):2億2740万トランジスター
WindsorとSan Diegoの差は1コア+2次キャッシュの1024KBとなり、これで1億1340万トランジスターとなる。一方San DiegoとOrleansの差は2次キャッシュ 512KB。その差が3300万トランジスターなので、2次キャッシュ 1MBを構成するのに必要なトランジスター数は6600万トランジスターとなり、純粋に1コア分のトランジスター数は以下のようになる。
- 1億1340万個 - 6600万個 = 4740万個
グラフ4の試算はラフなので、トランジスター数が多少多めに出ることは間違いない。しかし、前回のインテルのグラフ5と比較すると、大幅にトランジスター数が多いことが見て取れる。
ちなみにPhenom世代では、特にZosmaが1億1275万個と、異様にトランジスター数が多くなっている。これは、ZosmaはThubanと同じ6コアのダイを使いながら、2コアを無効化して4コアにしているために数字が跳ね上がって見えているだけで、実際はThubanと同じ6500万トランジスター/コア程度になっている。一方で、Bulldozerが3700万個程度に収まっているのは、2コアでFPUやデコーダを共有しているからだ。逆に言えば、こうした共有をしてもまだ1コア3700万個という、大きな数字になっているわけだ。
これらのグラフを眺めてみると、全体的にAMDはコアに費やすトランジスター数が、インテルより多めというのが一貫した傾向である。これはトランジスター数を容易に増やしにくい昨今の状況では、性能改善のボトルネックになりそうに思える。
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