マグネシウム合金は以前から軽量ノートパソコン用のボディー素材として利用されていたが、「加工し難い」という難点があった。一方で、NECパーソナルコンピュータは開発中のUltrabook「LaVie Z」(仮称)は、「マグネシウム・リチウム合金」を使用して、薄型軽量のノートパソコンを実現するという。今回のキーワードでは、今後の軽量ノートで広く使われる可能性が高いこのマグネシウム・リチウム合金について解説しよう。
軽量化パソコンの切札
マグネシウム・リチウム合金
マグネシウム・リチウム合金とは、マグネシウム合金よりも軽く、さらに冷間圧延(後述)による加工が可能な素材である。NECパーソナルコンピュータのリリースによれば、マグネシウム・リチウム合金を採用したことによって、13.3型ディスプレー搭載ノートで999gを切る本体質量を達成できるという。
LaVie Z用に開発されたこの合金は、一般的な軽量パソコンの筐体に主に使用されているアルミニウムと比べて約50%、マグネシウム合金と比べても約75%の重量ですみ、軽量化に貢献している。LaVie Zが披露されたイベントでは、素材の製造事業者はまだ秘密とのことだった。NECは軽量化の切り札として使いそうだ。
プレス成型が可能なマグネシウム・リチウム合金
従来から軽量ノートに使われているマグネシウム合金は、強度を保ちつつ軽くできるだけでなく、見た目も美しく、さらに電磁シールド性とリサイクル性に優れているというメリットがある。パソコンの内部は動作周波数が非常に高いので、高周波のノイズをまき散らす可能性が高い。そこでボディーに金属を使うことによって、外部にノイズを漏らさないですむわけだ。
一方で、マグネシウム合金は加工性が悪く、「冷間圧延」と呼ばれる加工法による成型には向かないと言われている。マグネシウム合金の結晶構造が「六方最密構造」(hcp)になっており、常温での延性・加工性が悪い。そのため、加工材と金型を250度程度に熱してから加工する「温間圧延」や、ダイキャスト、チクソモールディングといった加工法が主体となっている。簡単に言えば、従来の金属プレス加工以上の設備が必要なので、マグネシウム合金は加工コストが高くつくわけだ。
一方でマグネシウム・リチウム合金は、加工が容易な「体心立方構造」(bcc)であるため、冷間圧延によるプレス成型が可能だ。新素材ということで素材コストは高くても、加工コストが下がればトータルコストも下げることが可能だろう。
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