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これだけは知っておきたい 最新テクノロジーキーワード 第12回

「レアアース」モーターからガラスまで PCにも重要な資源

2012年06月27日 12時00分更新

文● 小林哲雄

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 「供給不足」だとか「不足が解消」だとか、昨今ニュースでよく目にするキーワードのひとつ「レアアース」。ここではパソコンなどに使われている分野に絞って解説してみたい。

かつては多かったレアアースの生産国

化学でおなじみの原子周期表からレアアースを抜き出したもの。黄色地のレアアースが主眼なので表の右側をバッサリ省略してランタノイドをまとめた

 レアアースとは、日本語では「希土類元素」と呼ばれる。具体的には、原子番号21の「スカンジウム」(Sc)、39の「イットリウム」(Y)、57から71までの「ランタノイド」と称される17元素のことを指す。元素周期表では「第三族」に属する。

 細かく分類すると、原子番号が57から63は「軽希土類元素」、21、39と64から71を「重希土類元素」と呼ぶ。ちなみに、レアメタルはレアアース以外の30種類の金属を含んでいる。

 レアアースの供給に関する最大の問題は、生産国の偏りにある。かつてはいくつかの国がレアアースの採掘を行なっていたものの、現在は撤退が相次いだ結果、極端に中国依存する状況になっている。下の表は、米国地質調査所(USGS)によるレポート「U.S. Geological Survey,Mineral Commodity Summaries」から抜粋したもので、生産国が減少した様子がうかがえる。

1996年の資料では、米国と中国がレアアース二大生産国であり、ロシアが続いていた

2012年の資料では、インドが生産を続けているものの、ほぼ中国の独占となっていることがわかる

強力磁石にはネオジムやジスプロシウムが使われる

 レアアースの価格も大きな問題だ。2010年に尖閣諸島に関する対立で中国が日本向け輸出を絞った際には、大問題になった。ジスプロシウム(Dy)の価格は、2010年にはキロ当たり250ドルで推移していたが、2011年7月には10倍以上の3700ドルにまで急騰した。レアアースでも特にジスプロシウムが問題になったのは、重希土類元素の生産が現在のところ中国に依存しており、今後数年も状況は変わらないと予想されている点にある。

 ジスプロシウムの主な利用は、ハイブリッド自動車や電気自動車に使うモーター用のネオジム磁石で、現在実用化されている磁性材料の中では、もっとも強力な磁力を持つ。パソコン関係では、HDDで2ヵ所に使われている。ひとつは記録盤を回転させるモーターで、もうひとつは磁気ヘッドを動かすボイスコイルモーターだ。

 モーターだけでジスプロシウム市場の3割ほどの消費があるため、価格高騰は大問題だ。そこで2011年の高騰をきっかけに、ジスプロシウム使用量を抑えた新型磁石の開発が進んだ。今年4月には、ジスプロシウムを使わずに世界最高水準の保磁力性能を持つネオジム系磁石(関連リンク)や、レアアースを使わない産業用モーター(関連リンク2)が発表された。

 なお、希土系磁石の中には「サマリウムコバルト磁石」があり、これには名前の通りサマリウム(Sm)が多く使われている。こちらは価格は高いものの、高温環境でも実用可能という利点を持つ。しかし、サマリウムがレアアースであるのに加えて、コバルトもレアメタルなので供給問題が付きまとう。

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