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最新パーツ性能チェック 第126回

NVIDIAの自信作「GeForce GTX 690」は、680×2と何が違う?

2012年05月03日 22時01分更新

文● 加藤 勝明

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消費電力と熱、ファンノイズ

 性能面はGTX680 SLIとほぼ同等ということはわかったが、消費電力や静音性といった、“Fermi世代までNVIDIAが不得意としてきた分野”ではどうだろうか。GTX680で大幅に改善されたとはいえ、2GPU仕様ではそれなりにすごくなることが容易に予測できる。今回テスト環境に1500W電源を用意したのはこれが理由だ。
 消費電力は、「watts Up? Pro」で測定。それにプラスして「OCCT Perestroika」に表示されるGPU温度でも確認した。静音性の測定は騒音計の「SL-1370」を使い、カードの排気口から40cm位置で測定している(暗騒音は32.2dBA)。GPU温度の測定は「GPU-Z」の読み取り機能を使用した。

消費電力

消費電力(単位:W) ←better

 まず驚くべきは消費電力だ。GTX680シングルに対し、GTX690はアイドル時でわずか12W上乗せされただけ。GTX680 SLIに対しても13W優位に立っている。
 そしてピーク時はゲーム中で60Wも省エネ。ベンチのためにVsyncを無効化しているので、現実の消費電力はもっと少なくてよいが、ワットパフォーマンス重視という謳い文句には嘘はない、といっていい。
 勢い余って1500W電源を準備してしまったが、実際は700W程度の80PLUS GOLD電源があれば、余裕で動かせそうだ。

GPU温度

GPU温度(単位:℃) ←better

 一方発熱はそれなり。さすがハイエンドといった印象だ。動作中のGTX690の金属部分はアツアツの湯飲み位に熱くなる。アルミ製カバーになったのも納得できる。

ファンノイズ

ファンノイズ(単位:dBA) ←better

 ファンノイズは、いずれの環境においてもアイドル時はかなり静か。聞こえてくるノイズの大半は水冷ユニットのポンプの音だけだ(水冷ユニットのファン速度は最低に設定している)。試しにファンを止めてみると、GTX690は1ファンで2GPUを冷やしているせいか、ファンノイズが微妙に目立つ印象だった。
 しかしゲームを始めて2分経過する頃には、どの環境もファンノイズが目立ちはじめる。GTX690は、GTX680シングルよりもノイズは大きいが、GTX680 SLIよりも静か。ファン1基を超高速でブン回さなくてもなんとかやっていけるよう設計されているようだ。

「GPU Tweak」を使ってちょっと実験

 ASUSTeK製のGTX680搭載カード「GTX680-GD5」に同梱されるツール「GPU Tweak」は、GPUのオーバークロックも可能だが、GTX680から導入された“Power Target”というパラメーターを操作することのできるツールだ。GTX690も当然保証外だが、GPU Tweakを使ってチューニングを施すことができる。

ASUSTeK製のツール「GPU Tweak」。GPUのオーバークロックも可能だが、GTX680から導入された“Power Target”というパラメーターを操作できる

 そこで、ベースクロックを1171MHzまで上げた設定と、クロック類は定格のままPower Targetを最低の80%まで下げた設定を用意し、「BattleField 3」のフレームレートと消費電力を比較してみた。Power Targetを100%未満に設定すると、ブースト時の最高クロックとベースクロックが同時に下がるので節電になるのだ。

BattleField 3 OC/DC設定

BattleField 3 OC/DC設定(単位:fps) better→

消費電力 OC/DC設定

消費電力 OC/DC設定(単位:W) ←better

 オーバークロックした状態では微妙に性能は向上したものの、トータルでは定格と変わらない結果に落ち着いた。消費電力が増加したことでブーストがかかりにくくなった結果だと推測される。オーバークロックも可能だが、明らかな効果を期待するには、水冷化などの冷却力強化を施さないとならないだろう。
 一方Power Targetを下げる効果は絶大だ。fpsは下がったが、定格に比べ平均で10fpsしか下がらないのに、消費電力は30W弱も減少している。サラウンド表示非対応のゲーム環境なら、Power Target下げ設定で運用すれば、“性能の無駄使い感”が少しは減るはずだ。

最上級の感動を求める人に与えられる格別の性能
消費電力や静音性でもかなりの革新を感じる意欲的モデル

 GTX690は従来の2GPU搭載フラッグシップモデルと比べると、性能はもちろん、消費電力や静音性でもかなりの革新を感じさせる意欲的モデルといえる。
 しかし現存する人気ゲームタイトルをフルHD液晶ディスプレー1画面で遊ぶことを前提にするなら、GTX690は完全にオーバースペックと言わざるを得ない。その状況ならGTX680で十分だし、むしろそのクラスを要求するゲームは少数派だ(来年「Crysis3」が発売予定だが、その頃にはまた次世代GPUの影が見えてくるだろう)。半端なコアゲーマーの環境ではGTX690のコストパフォーマンスは、“俺ってハイエンド好き”をアピールするための製品になってしまいかねない。

現存する人気ゲームタイトルをフルHD液晶ディスプレー1画面で遊ぶには完全にオーバースペック。フルHDをさらに超える負荷をかける多画面表示にするとGTX690が輝きはじめ、単一のビデオカードとしては夢の製品となる

 だがフルHDをさらに超える負荷をかける多画面表示にするとGTX690が輝きはじめ、単一のビデオカードとしては夢の製品となる。「そこまでしてゲームをしたいの?」と考えてしまう一般人を、このGTX690はターゲットにしていない。「これは凄い!」と心から思えてしまうエンスージアストだけを見ているのだ。
 そこそこのクオリティーの液晶ディスプレー3台+GTX690で軽く20万円は吹き飛んでしまう感じだが、そこから得られるエクスペリエンスはプライスレス。最上級の感動を味わうためには金に糸目はつけないぜ! という人なら買って間違いなしの製品といえる。

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