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長年の運用ノウハウを活かしたマネージド型クラウドも投入

ロックインはなし?OpenStackベースのHP Converged Cloud

2012年04月16日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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4月13日、日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)は「HP Converged Cloud」を発表し、パブリッククラウド事業に本格参入した。また、プライベートクラウドをHPが運用するマネージド型クラウドも合わせて投入し、すべてのクラウドを連携させる戦略を明らかにした。

使ってみたら気がついたクラウドの不満

 HP Converged Cloudはプライベート、パブリック、オンプレミスまで統合したハイブリッドクラウドを提供するサービス。従来から提供してきたプライベートクラウド向けのアプライアンス「HP CloudSystem」に加え、パブリッククラウドである「HP Cloud Services」とマネージド型の「HP Enterprise Cloud Services」が提供される。すべては一貫したオープンアーキテクチャーで運用され、「Converged」という名前の通り、相互が連携するのが大きなメリットとなる。

日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員 エンタープライズ事業統括 小出伸一氏

 冒頭、日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員 エンタープライズ事業統括 小出伸一氏は、Webサービスや検索、SNS、サービスプロバイダーなどでの高い実績を披露。このうちプライベートクラウド向けのHP CloudSystemは575サイトで導入されていると説明。「すでに空中戦ではなく、地上戦になったクラウドの分野で実績を上げている」(小出氏)と述べた。

 経営のスピード化、コスト最適化、グローバル展開の容易さなど、クラウドのメリットは明らかだが、多くの企業はセキュリティ、システム移行、監査・ガバナンスなどの課題を抱えているという。加えて、実運用を始めて明らかになった課題も多く、「クラウドベンダーの独自仕様によってロックインされることが増えている。チェックインしやすいのに、チェックアウトしにくい飛行機に乗るようだとお話してくれたお客様もいた」と話した。また、導入が容易というメリットが裏目に出て、事業部単位で導入されるため、ガバナンスが低下していること。さらにはシステムやプロセスの統合が困難で、周辺コストがかえって増加しているといったデメリットもあるという。

クラウドの一般的な課題。使い始めてからの課題

 これに対して、HPが提供するのが、今回発表されたHP Converged Cloud。オープン性や標準化を重視した選択肢の高さ(Choice)、セキュリティや管理面などの信頼性(Confidence)、共通したアーキテクチャを採用した一貫性(Consistency)という3つの“C”を提供するという。

オンプレミスもクラウドも統合・連携

 次に執行役員 クラウド事業本部&ストラテジック・テクノロジー・オフィサーの山口浩直氏がサービスの詳細を解説した。まず同氏は、既存のオンプレミス、プライベート、パブリックまでを統合し、連携させるのがHP Converged Cloudだと説明。特にプライベートのリソースが足りなくなった際に、パブリッククラウドから動的に調達をかける「ハイブリッドデリバリ」を実現できるとアピールした。

日本ヒューレット・パッカード 執行役員 クラウド事業本部&ストラテジック・テクノロジー・オフィサー 山口浩直氏

 新たに提供されるManaged Cloud Servicesは、プライベートクラウドの運用管理を請け負うマネージド型のクラウドサービス。グローバルで均一のサービスが連携する複数のデータセンターで世界で同時展開される。「HP ECS(Enterprise Cloud Services)」というサービス名で、IaaSをはじめ、メール、Microsoft SharePoint、ユニファイドメッセージ、ディザスタリカバリなどのサービスが順次追加される。山口氏は、「EDSの買収により、HPは世界最大のアウトソーシングの会社になっている。こうした実績やスキルが高く評価されている」とのことで、30万人を超える同社自身のITシステムの実績や、運用面での経験やノウハウが大きな売りになるとアピールした。

Managed Cloudの概要

Managed Cloudの各サービス

 パブリッククラウドであるHP Cloud Servicesは昨年からβテストを進めており、いよいよ5月から提供開始される。HPのハードウェアとソフトウェアを用いているが、ベンダーロックインを排除すべく、OpenStackを採用している点が大きな特徴となっている。Managed Cloud ServicesもOpenStackベースとなっているため、共通のアーキテクチャーにより、連携も容易になるという。現在はセルフサービスで仮想マシンを提供する「HP Cloud Compute」とRESTベースのオブジェクトストレージサービス「HP Cloud Object Storage」が用意されている。エコシステムの構築にも力を入れ、多数のアプリケーションやサービスが相乗りできるようにしていくという。

5月から開始されるHP Cloud Servicesの概要

 また、クラウドビジネスの拡大に向け、サーバー、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェア、サービスの各部門を横断する「クラウド事業本部」を拡充するという。グローバル展開を行なう大手のITベンダーが自ら構築したクラウドということで、ユーザーの選択肢は拡がっていくが、製品を供給する顧客となるクラウド事業者も競合関係になる。ベンダー、サービス事業者入り乱れての競争に激しさが増している。

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