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HP独自ディストリビューションも提供!Cloud Foundry対応も発表

OpenStackをクラウド戦略の中心に据えた「HP Helion」の覚悟

2014年05月22日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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5月21日、日本ヒューレット・パッカード(HP)はクラウド製品やサービス群を包括した新ブランド「HP Helion」を発表した。ハイブリッドクラウドの実現のために、OpenStackをベースにした統合アーキテクチャを中心に据え、独自ディストリビューションも提供する。

ハイブリッドクラウドの理想に向けて2年で10億ドルの投資

 HP HelionはHPのクラウド製品・サービスを包括する新しいブランド。従来、ハイブリッドクラウドを前提に、OpenStackをベースに製品とサービスを1つのポートフォリオに統合した。5月7日に米国で発表されており、従来の「HP Converged Cloud」を置き換える統合ブランドの立ち上げとともに、OpenStack関連製品とサービス、データセンターの世界展開、Cloud FoundryベースのPaaSという3つの施策に対して、今後2年で10億ドル以上を投資することが発表された。

今回の発表内容の骨子

 なお、Helionは正電荷を持つヘリウムイオンで、「企業のさまざまなITをつなぐ役割を担うべく、ヘリウムのように普遍的、かつ太陽のように雲(クラウド)を超えた存在でありたい」という意味が込められている。

OpenStackで一貫性のあるアーキテクチャを実現

 記者発表会では、米HPに新設されたクラウドストラテジストグループ技術担当部長 真壁 徹氏により、詳細な内容と日本での展開が説明された。

米HP クラウドストラテジストグループ技術担当部長 真壁徹氏

 HP Helionが登場した背景は、「2020年、1兆を超すアプリが、1000億を超すデバイスから生み出される58ゼタバイトのデータをやりとりする」というデータ量と複雑さが加速度を増しているという現状だ。従来の考え方と仕組みでは、こうした事象を乗り越えられない。既存資産を効率化しながら、HPが提唱する「New Style of IT」への移行が必要というのが同社の主張だ。「これまでと全然違うITの世界が到来する。その世界を乗り切るための手段がクラウドだ」(真壁氏)。

 そして、これを実現するためのクラウドに関しては、ハイブリッドクラウドがベストだという。真壁氏は、「本音を言えば、クラウドの本質はパブリッククラウドだ。APIを使ってアプリケーションやコンピュートの迅速な配置、使った分だけ払うという課金体系などを持っている」と述べた上で、一足飛びにパブリッククラウドに行けない実態もあると指摘。その点、セキュアで、コントロールの効くプライベートクラウドを構築したいというニーズは確実に存在している。こうした現状を考えると、パブリック、クラウド、そしてIT資産をベンダーが持ち、運用管理まで行なうマネージドクラウドなどを組み合わせたハイブリッドクラウドが有効な選択肢だという。

 しかし、現実のハイブリッドクラウドは、理想とはほど遠い。「ハイブリッドクラウドを構築したといっても、実態は社内は仮想化しただけ。社外はAWSやGoogleを使っているだけで、技術的な一貫性がない」(真壁氏)という。そこで、OpenStackを使った一貫性のあるアーキテクチャで提供するのが、HP Helionだという。「ここ2年で培ってきたOpenStackというスタンダードを、すべての製品・サービスに展開することで、お客様の望むハイブリッドクラウドを提供できる」(真壁氏)。

HP Helionのポートフォリオ

 HP Helionは、プライベート、マネージド、パブリックという3つのクラウドを緊密に連携できるハイブリッドクラウドとして提供される。OpenStackを共通のアーキテクチャに据えることで、大きく3つの価値を提供できるという。

 1つ目は豊富な選択肢とイノベーションを提供する「オープン」の価値だ。「オープンの本来の価値は、お客様に選択肢が生まれること。オープンの世界でもHPは一番うまく、安く製品を提供できるが、他のベンダーの製品も選択できる。OpenStackの周りにあるエコシステムを活用できる」と語る。一方で、オープンソースであるが故のデメリットにも言及する。真壁氏はSCOがソースコードの著作権に関してIBMとLinuxユーザー企業を訴えた問題を取り上げ、「OpenStackでも同じことが起こらないとは限らない」と指摘。ここうした事例を想定し、HPは知的訴訟侵害の保護を提供。ユーザーが安心してOpenStackを利用できる「セキュア」という価値を提供する。

 3つ目の価値が「アジャイル」だ。真壁氏は、「仮想化しただけの“なんちゃってクラウド”を提供するわけではない。パブリックでも、プライベートでも、マネージドでも、APIを叩けばリソースが呼び出せるような環境を提供していく」と語る。さらにグローバルベンダーとしての強みを生かし、もっとも速く、もっとも安く提供できるメリットも強調した。

(次ページ、無償と有償の2つの独自ディストリビューションを提供)


 

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