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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第92回

ノマド化する音楽レーベル――「LOiD」消滅と復活の物語

2012年04月15日 12時00分更新

文● 四本淑三

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「LOiD」それは流浪のレーベル

―― でも、すぐに仕事を始められたような印象ですけど。DJイベントのMOtOLOiDとか。

Image from Amazon.co.jp
VOCALOID民族調曲集 feat. 初音ミク(Append) / 鏡音リン・レン(Append) / 巡音ルカ(新Append β) / KAITO(Append)  【ジャケットイラストレーター: 憂】

村田 MOtOLOiDの後に、いろんな会社から声をかけていただいて。4月くらいからですね。実はボーカロイドのCDを初めて作ったんですよ。「VOCALOID民族調曲集」という。これは1から100まで全部やりました。

※ 2011年2月26日に第1回のMOtOLOiDが東京新宿の8bitCafeで行なわれた。MOtOLOiDという名前は、主催者が「元LOiD」の人であることに由来。もちろんゲーム「メトロイド」にも由来。

キャプミラ おお、あったあった。あと何をやったんですか?

村田 1から100までじゃないですけど、ヤマハの全ボーカロイドを入れたベストも少しだけ手伝いましたし。年末はCLUB CITTAのイベントで「カウントダウンしてみたを手伝ったりとか。そういうのをコツコツやっていましたね。

2011年大晦日のカウントダウンイベント

―― 村田さんくらいだったら他から誘いもあると思うんですが。

村田 社員になれって誘われるんですけど、かたくなに断っています。そうなっちゃうと中からの意見にしかなり得ないんだというのが、フリーになってよく分かった。どメジャーにいる他のレコード会社とか、マネジメントの事務所と仕事をしていると、やっぱり僕らって外部だったことが良く分かる。音楽業界がどういう仕組みになっているのか、もっと知りたくて。

―― レコード会社も規模縮小で、A&Rもフリーの人が頑張ってるわけだけど、その辺の目利きのセンスがより大事になる気がするんですね。

キャプミラ マンガでもそうですけど、ネットで人を探してきて、売って、ベストセラーみたいなことが多いじゃないですか。そこら辺を専門に見ていける人がいないと、これからやっていけなくはなるんでしょうね。だから村田さんみたいな人は、これから重宝がられると思いますよ。それで村田さんが動けば、どこに行ってもLOiDという名前で出せる。

―― 流浪のレーベル、LOiDの誕生ですね。

村田 流浪のレーベル! いいっすね。宿なしヤドカリみたいな感じで。

―― 村田さん自身がレーベル機能になるわけですよ。業界で似たような立場で仕事をしている人って他にいませんか?

村田 ほとんど会ったことがありません。僕はmuzieに(ユーザーとして)登録したのが16歳だったんですよ。それから当時だとヤマハのサービスもありましたよね。

―― SoundVQを使うやつね

村田 あとはnextmusicとかaudioleafとか。そういうものを全部見ていて、レーベルの運営経験も少しあって、最近のSoundCloudまでチェックしているような人は本当に少ないと思います。津田さんとかは別格ですけど……。

※ ヤマハのサービス : ヤマハが運営する「プレイヤーズ王国」。サービス開始は2000年12月。JASRACへの著作権使用料をヤマハが代行するため、カバー曲の投稿が可能という当時としては画期的なサービスだった。2007年に「MySound」に名称変更され2009年12月22日にサービス終了

※ nextmusic : 運営は株式会社ネクトミュージック。サービス開始は2001年。2006年に吉本興行系のコンテンツ制作会社である株式会社ファンダンゴと提携。2010年にサイト消滅という形でサービスを終えている

※ audioleaf :運営は株式会社メディアリーフ。2005年サービスを開始

―― そういう意味でも貴重な存在ですが、逆にレコード会社の機能は、フリーになってどんな風に見えますか?

村田 レコード会社でも、出して終わりみたいなパターンが多くて。そのあと成長しないし、レーベルでやる意味はあるのか? という話はよく聞くようになりましたね。それと、これはLOiDの頃からずっと思っているんですが、僕らがいなくても「インターネットでこれくらい人気がある」「出したらこれくらい売れる」と、アーティストがレコード会社に持ち込めば、そのまま発売される可能性は高くなりましたよね?そこに僕らみたいな存在がいる意味っていうのは、一体何なのか。これは永遠の課題だと思っています。

―― 別の切り口を探したり、価値を付けるという意味はあると思いますよ。

村田 自分が意識しているのは選択肢を増やすことですね、買う側の。いろんな物がいろんな風に評価されて、いろんな経路を経て手に入る。最近そういう流れがなくなってきたのを凄い危惧してる。同じような物ばかりが集まっていたら、ブランドとして強いものを買っていくわけじゃないですか。そうすると同じようなものしか届かない。

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