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ソーシャルゲームの現状を網羅した一冊が本日発売

『ソーシャルゲームのすごい仕組み』はココがすごい!

2012年04月10日 09時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 ASCII.jpで連載「メディア維新を行く」(関連サイト)を執筆中のジャーナリストまつもとあつし氏の新刊『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)が本日(4月10日)発売となった。何かと話題の“ソシャゲ”周りを手軽に俯瞰できる一冊に仕上がっている。さっそく本書の読みどころを、まつもと氏に聞いてみた。(聞き手=ASCII.jp編集部ディレクター小林)

絡まったまま議論されがちなマネタイズの諸問題を解きほぐす

小林 「まずは本書の読みどころを。例えばタイトルの“すごい”ってどっちの意味なんだろうって関心があるのですが」

『ソーシャルゲームのすごい仕組み』の著者・まつもとあつし氏

まつもと 「タイトルについては、担当編集さんとちょっとした議論になったんですよ(笑)。執筆には、RMT(リアル・マネー・トレード)を巡る課題を解説したいという気持ちで臨んだという経緯もあったのですが、経済規模的に見るとソーシャルゲームは明らかに“すごい”。本の帯にもあるように、市場規模3000億円、利益率40%超ですからね。それは確かにすごいのだけれども、私としては“そこには課題もあるよね?”というスタンスなので」

小林 「なるほど。ポジティブな意味での“すごい”なんですね。すごいには“えげつない”という意味もあるから、どっちなんだろうと素朴な疑問を感じていました」

まつもと 「実はそちらの“すごい”も書いています。刊行が2ヵ月延期になったことで、GREEのアイテム複製事件や、コンプガチャといった話題も入れ込んでいます。

 書き始めたときには僕自身、ソーシャルゲームってもうけたいという欲が前面に出過ぎていると感じる面がありました。そして昔ながらのゲームとはずいぶん違った印象を与えるなという感想も持っていました。

 ところが、ソーシャルゲームにハマっている人たちと会って、どこが面白いのか、何に魅かれるかを聞き回るうちに、興味深い面も見えてきたのです。本書ではそれについてページを割いて書いているというのが1点。

 次にマネタイズの部分に課題を抱えていることは、昨今の報道を見ても分かる通りですが、子供がアイテム課金に大金を払ってしまうことや、ガチャで射幸心を煽っていること、そして出会い系として使われる……といった周辺の話題が渾然一体となって語られている。そのあたりを解きほぐして、1つずつ問題の所在を明らかにしようと努めたことがもう1点ですね」

小林 「RMTやコンプガチャに関する話題も多く聞くようになっています」

まつもと 「脱稿後のニュースとしては、グリーがRMT業者に出品停止および削除を要請したほか、外部識者によるアドバイザリーボードの設置、そしてNHN Japan、グリー、サイバーエージェント、ドワンゴ、ディー・エヌ・エー、ミクシィの6社がネットワークゲームをの利用環境向上等に関する連絡協議会を設置したというニュースなどがありました。

 特に、これまでネットワークゲームとRMTは――利用規約で禁止されていたとはいえ――共存共栄というか暗黙の了解というか、なあなあで推移していたと思うのですが、今回グリーが明確に禁止の方向に舵を切ったことは注目ですね」

「ここまで投資したのだから……」という心理

小林 「コンプガチャについては解説されていましたね。かいつまんでその仕組みを教えてください」

伸び悩むゲーム業界の中で、唯一破竹の勢いを見せるソーシャルゲーム。業界の双璧のGREEとDeNAはそれぞれ3000万以上の会員を獲得し、高い収益率を維持し、急成長を遂げている。今なぜ若者が、このソーシャルゲームに夢中になっているのか? ソーシャルゲーム業界の成り立ちから従来のゲームビジネスとの違い、ユーザーの変化など、その人気の秘密を紐解く。『ソーシャルゲームのすごい仕組み』まつもとあつし著/アスキー新書/定価:780円

まつもと 「これは例えば、期間内に特定のカードを6枚集めることで、強力なカードが1枚手に入るというイベントです」

小林 「その6枚のカードは1回300円のガチャを引くことで手に入るという仕組みですね。すべて集めるためには何度もガチャを引かなければならない。でもそれだけでは特に問題になる要素はなさそうですが……」

まつもと 「まず、毎回その6枚だけが出るわけではありません。数十枚のカードのなかから特定の6枚を揃えることになります。そして……ここが確率について誤解しやすい箇所なのですが、最初の数枚は比較的容易に手に入ります。しかし、すべて揃えようと思うと膨大な確率になってしまうという点です」

小林 「そうか。最初は6枚のうちどれかが出ればいいけど、コンプするためには特定の1枚が出ないといけない。それだけでも1/6の確率になる。さらに何回引いても母数が減ることはないから、いっぱい引けばその分だけ当たりやすくなるという感覚とも乖離するわけですね」

まつもと 「執筆にあたって、コンプガチャのシミュレーターを作成した方にもお話を伺っています。枚数が揃うほど、目当てのカードが出る確率は下がっていく一方なのです(註:これはあくまで確率論の話。ゲーム提供者側が恣意的に確率を操作しているというような話ではないことに注意)。

 一方で6枚中5枚が揃っているなら、『あと1枚だからもう少しお金をつぎ込もう』と考えてしまいがちですよね。コンコルド錯誤と呼ばれる心理現象です。

 この言葉は、開発が困難で本来なら早期に打ち切るべきだったのにも関わらず、『ここまで投資したのだから』と開発を続行させてしまったコンコルドに由来しています。コンコルドは莫大な費用を投じた挙句、営業的にも失敗した。

 ゲームによってはAとAのカードを合体させると、能力が向上したA+に成長するといったシステムになっていたりもします。プレイヤーとしては6枚を2回分コンプリートして、強力なカードを2枚手に入れたいと思うでしょう」

小林 「人間の心理を逆手に取ったシステムになっているんですね……」

 コンテンツ業界屈指の利益率を誇るソーシャルゲーム。その未来について、次回もまつもと氏に語っていただく。

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