横浜を目指して2時間の航海
参加者の乗船とPersonal Shelterへの収容が済んだ午後2時半に、フォート・マクヘンリーは出港した。訓練当日は好天に恵まれ、風や波もおだやかな航海日和。埠頭を離れたフォート・マクヘンリーは、思いのほか速い速度で海面を滑るように進んでいく。目指すは横浜港瑞穂埠頭。約2時間の航行の予定である。
船が航行を始めるとしばらくして、救命胴衣を身につけた参加者も船上に現われた。乗っている間はなにもすることがないので、乗組員の案内で船内を見学することとなったようだ。波がおだやかで日差しも暖かく、訓練でなければいいクルーズ日和である。乗船当初は緊張した表情をうかべていた参加者も、緊張が解けた様子。
若洲の埠頭を出発したフォート・マクヘンリーは、東京ゲートブリッジをくぐってからは、ほぼフェリーの航路に沿って埋め立て地や東京国際空港、東京湾アクアラインの換気塔「風の塔」などを左右に見ながら、横浜港を目指して進む。混雑した東京湾を慎重かつ軽やかに進みながら、1時間40分程度で横浜港の入り口あたりに到着した。
ところが、ここで少々入港待ちのため停泊することに。日中は日差しもあって洋上の寒さも感じなかったが、日が傾くと船上はたちまち気温が下がり、真冬の服装でも寒さでガタガタと震えるほどに。結局横浜港の入り口についてから、瑞穂埠頭に接岸するまでほぼ1時間かかった。実際の災害時も入港時に時間がかかることはあるだろうから、もし自分が帰宅困難者となって船での輸送に頼ることがあれば、気温の低い時期はそれなりの防寒具を用意しておいた方が良さそうだ。
入港前に足止めをくらったとはいえ、おおむね訓練は順調に進み、参加した職員の方々も洋上輸送のプロセスや注意点について、学ぶところがあっただろう。実際にその経験が生きるような機会はないに越したことはないが、地震から逃げ場のない日本に住む以上、こうした訓練で経験を積んでおくことが、いざという時に役立つのは言うまでもない。読者の方も避難や帰宅困難時の訓練に参加する機会があれば、「たかが訓練」と馬鹿にすることなく、積極的に参加していただきたい。備えあれば憂いなし、である。