ライブ配信と非同期配信の使い分け
―― グループ内のバンダイチャンネルはどのような活用方法になったのでしょうか?
尾崎 「ライブ配信はUstream、非同期はバンダイチャンネルというすみ分けでしたが、バンダイチャンネルに関しては、じつは理解が得られやすかったのです」
―― ちょっと意外です。
尾崎 「もう、全然もめることなく(笑)。
Ustreamが有料モデルであれば、また話は違ったのでしょうが、あくまでもプロモーション、一次放送に近い位置付けですから、バンダイチャンネルもそのあとに通常通り、有料配信モデルを開始できます。
そもそもUstreamで観ている方はネットユーザーということもあり、バンダイチャンネルとの親和性が非常に高いのですね。実際、有料配信も素晴らしい数字でした。バンダイチャンネル側も『Ustream配信をやっていなかったら、、もっと小さい数字だったと思います』と言ってすごく喜んでいましたね」
初回わずか1500が最終回では7万超に
―― Ustreamの視聴状況はどのように把握されていたのでしょうか? ティッピングポイント(一気に視聴が増えたポイント)と思われるタイミングなどはありましたか。
尾崎 「各回の配信実績を振り返ると、急に視聴数が増えたタイミングはありません。ほぼ右肩で上がっています。
第1話はわずか1500程度の視聴(ユニークユーザー)でした。それが2話で3倍になりました。3話でだいたい8000ぐらい。その次がおよそ1万3000ですね。多少凸凹はありましたが、ほぼ一次直線で増えていきました。
1クールが終わったあたりでそれが5、6万に達し、最終話の25話で7万7000までどかーんと増えました。そこが唯一、直線的な伸びから外れた爆発的な視聴数でしたね。
まず、2話で3倍になったところが1つのポイント、そして3話から4話にかけての1万超えも大きなポイントだったと思います。
1話にはあらゆる意味で、“切られないように”勝負を賭けていましたから、これまでお話してきたような仕掛けと内容が功を奏したのだと思います。『牛角のロゴが出てくる、なんだかヘンな作品がある』ということで口コミが拡がった。そしてUstreamやTwitterのような口コミを全国同時に共有できる手段があった、というのが大きいでしょう」
―― その様子はいわゆるまとめサイトなどにも記録・共有されるわけで、関東の人も『これは観なければ』という感覚に捕らわれますよね(笑)
尾崎 「面白そうなネタを逃したくないという強迫観念が(笑)。いずれにせよ、中身・仕掛け・手段の3つが決め手だったと振り返ることができます。
1話で『なんだか気になる作品』『個人的には面白いような気がした』という感覚は持ってもらったとして、しかしそれは表明せずに様子見、という方も多かったと思うのです。2話以降の出来も確認する必要があったでしょうし。
そこに『よくできている』と高い評価をいただいた3話がやってくる。面白そうな感覚が確信に変わって、『みんなでみようぜ』という動きがどーんと出てきて、4話で1万を超え、あとはどんどん……という感じでしょうね」
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