容易に壁掛けを実現するためのさまざまな工夫が満載!
まずは、最大の魅力である“フリースタイル”について、商品企画を担当したAVシステム開発本部の小笠原堂裕氏に聞いてみた。
小笠原 「フリースタイルAQUOSは、ディスプレー部にアンテナ線の接続を不要としたことで、今までは置けなかった場所にテレビを設置できるようになったことが最大の魅力です。壁掛けを実現したユーザーも増えていますし、離れた場所にしかアンテナ線のない部屋でも使えるといった点でもお客様に歓迎されています」
シャープの調査によれば、薄型テレビを壁掛け設置で使っているユーザーは、従来は1.1%と低い数値だったが、フリースタイルAQUOSでは19.6%と大幅に増加したという。
製品を選んだ理由も、アンテナ接続が不要なこと(37.3%)、壁掛け設置がしたい(19.6%)、デザインの良さ(23.5%)と、レイアウトフリー性と優れたデザインの良さが高く評価されているようだ。
そして、ユニークなのは、60V型の大画面サイズまで揃ったラインナップにも関わらず、売り上げ台数の半分近くをホワイト系カラーのモデルが占めていること。薄型テレビといえば黒が一般的で、特に大画面モデルはほとんどがブラックだ。シャープとしてもこれは異例なことで、従来ならばブラック系が7~8割を占めていたという。
小笠原 「ホワイト系カラーが選ばれる理由は、壁掛けをしたいというユーザーが多いことの現れだと思います。
一般的な家庭の壁も白系が大半なので、壁と調和しやすく画面だけが浮かんだような印象で使っていただけます。そのため、電源コードも一般的なテレビでは珍しい白色を採用しています。ディスプレー部から伸びる電源コードを目立ちにくくして、壁掛けをしやすいようにとの配慮からです」
そして、12月にはF5シリーズの20V/32V/40V型にレッド系のカラーバリエーションが追加されているが、赤といっても、ワインレッドのような色調となっており、これは和室などで合わせやすい色を追求した結果。
薄型で画面周囲のフレームも細いすっきりとしたデザインだけでなく、カラーも含めて家の中のさまざまな場所で自由に設置できることが考えられているのだ。
また、デザインという点で言えば、大幅な薄型化にも驚かされる。
40V型でも壁から飛び出す部分の厚みは約4cmほど。従来ならば取り付け金具の幅も含めて10cm以上も飛び出していたことを考えると、まさに壁にぴったりと貼り付けられている印象になる。
これも、ディスプレー部の大幅な軽量化により、取り付け用金具の厚みを極限まで抑えることで実現できたものだ。
小笠原 「ディスプレー部の薄型・軽量化は、フレーム部などの使用部材を減らすことで実現しました。これはパネルから一貫して生産している垂直統合の強みを活かしたものです」
特にF5シリーズは壁掛け用金具が付属することもあり、その気があればユーザー自身で壁掛けを実現することも不可能ではなさそうに思える。壁が薄い場所を避け、しっかりと金具を固定できる場所を判別できれば、作業自体は金具でネジを固定するだけと簡単だ。しかも、金具を取り付ける場所を手軽に確認できる実物大の取り付けガイドも封入している。
シャープとしては、落下の危険があるため、取り付けは業者に依頼することを推奨しているが、その場合の費用も、シャープのサービスを利用した場合が2万7000円、量販店などに依頼する場合では1万円前後となっているようだ(32V型の場合)。
壁の補強が必要な場合は別途費用が発生することがあるにしても、いわゆる壁掛け設置のための工賃としては異例に安価だ。テレビラック購入とあまり変わらない費用で壁掛けができてしまうのはちょっと驚きだろう。
ただ、東日本大震災を経験した現在、手軽に壁掛けができるというだけでは、落下の危険などを考えて躊躇してしまう人も少なくないだろう。その点に関してはシャープも、震災発生後、あらためて壁掛け設置での強度や耐震性について十分な対応を施したという。
小笠原 「F5シリーズに付属する金具は、当初は上側一箇所でした。本体が軽量なこともあり、強度についてはそれで十分だったのですが、震災発生後、耐震テストをさらに厳しくした結果、上側の金具のみだと、大きな地震ではディスプレー部がバタバタと跳ね上がってしまうことがわかりました。
そこで、下側にバタつきを抑えるための金具を追加し、より確実な壁掛けができるように改善しています」
F5シリーズの取り付け金具は、金属製の上側部品、樹脂製の下側部品がセットになっている。上側でディスプレー部の重量を支え、下側でディスプレー部が浮き上がらないようにする仕組みだ。
金具が増えると設置が面倒になりそうだが、上下ともにフックに引っかけるように設置するので、取り付けのしやすさにはほとんど影響がない。これならば安心して、壁掛け設置を実現できるだろう。