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「100%Web」を掲げるグーグルが企業向けアプリでも革命

「クラウド怖い」はもう終わり?Google Apps快進撃の背景

2011年12月20日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「毎日5000企業増」という破竹の勢いでユーザーを増やしているのが、ご存じ「Google Apps」である。グーグル エンタープライズ部門の藤井氏に、クラウドの先兵としてさまざまな取り組みにチャレンジしてきたGoogle Appsの軌跡と現状を聞いてみた。

「できないこと」を「可能にしてきた」Google Apps

 Google Appsについては、今さら説明するまでもないだろう。クラウド型のオフィスアプリケーションで、メールクライアントである「Gmail」を中心に、スケジューラーである「Googleカレンダー」、オフィススイートの「Googleドキュメント」、音声コミュニケーションツール「Googleトーク」などを独自ドメインで使えるものだ。無償版や教育機関向けの「Google Apps for Education」のほか、ユーザー数無制限でセキュリティやサービスレベルなどに配慮された有償のGoogle Apps For Businessも用意されている。導入企業数は全世界で2008年は200万だったが、2011年では倍増の400万、ユーザー数は4000万人以上で、毎日5000社の企業(ドメイン数)が増えているというハイペースだ。

 グーグル エンタープライズ部門の藤井彰人氏は、「最初は中小企業がユーザーの大半でしたが、大企業での導入が急激に増えています。今では数万規模が珍しくなくなりつつあります」と、ユーザー層の変化について、こう言及する。実際、最近の国内事例ではカシオ計算機、サカタのタネ、JTBグループ、ソフトバンクテレコム、ユニヘアーなどビッグネームも多く、クラウドへの抵抗感が格段に下がったことがうかがえる。特に日本では、3・11の大震災以降、BCPの見直しを目的に導入する企業も多いという。

グーグル エンタープライズ部門 シニア プロダクト マーケティング マネージャー 藤井彰人氏

 こうしたGoogle Apps普及の背景には、クラウドの弱点や課題を解消する施策があったという。「昔はセキュリティや信頼性などに不安があり、ユーザーさんにもそれこそ『クラウド怖い』といった先入観があったと思います」(藤井氏)。こうした間違った先入観を払拭すべく、グーグルではサービスの稼働率を極限まで高める努力を続けてきたという。「2010年の稼働率は99.984%でしたが、今年は以前あった『計画停止をのぞく』という文言を消したんです。にも関わらず、2011年は99.99%を超えそうです」(藤井氏)と話す。また、多くのユーザーが不安として挙げるデータセンターのセキュリティやオペレーション体制に関しても最大限の配慮が行なわれており、「セキュリティ対策を映像化したYouTubeやGoogle Appsのデータ運用ポリシーを記載したホワイトペーパーも用意されています」(藤井氏)という。

グーグルのデータセンターのセキュリティについて紹介したYouTubeビデオ。「『google datacenter security』で検索してください」(藤井氏)とのこと

知らないうちに機能もどんどん強化

 こうしたGoogleAppsの導入を促すキラーアプリケーションとなっているのが、やはりGmailだ。メールはビジネスアプリケーションの本丸的な存在で、グループウェアやSFAに比べても普及率や重要度が違う。しかし、従来のインターネットメールシステムでは、使い勝手や容量、セキュリティ、管理負荷など、さまざまな課題が山積みになっている。しかも、単にWebインターフェイスに置き換えたからといって、これらの課題が解決されるわけではない。こうした課題にGmailはメスを入れた。実際、Gmailは弊社でも使っているが、メールの使い勝手をそのままに検索性を圧倒的に向上させ、Webサービスとの連携も容易に行なえるようになっている。オフラインでの利用も可能で、ユーザーを悩ませる迷惑メールに対しても強力なフィルタリングがかけられている。システム部門側からしても、サーバーの運営やセキュリティ対策をすべてアウトソーシングできるメリットは大きい。

 これらGoogleAppsは逐一更新が行なわれており、ブログなどで改良点が説明されている。「Gmailの最新版では、ユーザーインターフェイスが改良されており、情報集約が進んでいます。その他、たとえばZipファイルの中身をプレビューしたり、開封通知をサポートしたり、細かいアップデートも施されています」(藤井氏)とのこと。また、GoogleドキュメントもPPTXファイルのインポート、モバイル版Google Appsでの検索強化、チャートの追加、セルの縦結合など大幅に強化。先頃はSNSであるGoogle+とGoogle Appsが統合され、たとえば自社ドメインにのみつぶやくとか、ビデオチャット「Hangouts」を使うといった企業向けの機能が利用可能になった。気づかないうちに機能や使い勝手がどんどん強化されているのも、クラウドならではのメリットだ。

最新のGmailのユーザーインターフェイス。確かにすごい情報集約だ

 もちろん、カスタマイズやサポートなどオンプレミスに比べた課題もあるが、ここは認定パートナーに補ってもらうというのが、グーグルのスタンス。「Google Appsの認定パートナーは実際Google Appsを導入しているユーザーさんでもあるので、ユーザーの悩みも解消できます。単なる再販だと差別化できないので、みなさん頭をひねって、付加価値を付けてくれています」(藤井氏)とのことで、ユーザー認証の統合やモバイル対応、ポータル化などで多彩なソリューションが生れているという。

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