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Excelのグラフでは価値ある情報が見えない?

地理にひも付くビジネス情報を最大活用できるGoogle Maps

2012年05月22日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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グーグルのビジネス向けアプリケーションというと、Google Appsが思い浮かぶが、同様に伸びているのがGoogle Maps/Earthだ。「会社の所在地マップ」だけにとどまらない拡がりを見せているGoogle Maps/Earthの現状について、グーグル エンタープライズ部門 シニアプロダクト マーケティング マネージャー 藤井彰人氏に話を聞いた。

進化し続けるGoogle Maps

 Google MapsやGoogle Earthと聞くと、マウスでグリグリ動く地図といったイメージしかないユーザーもいるかもしれないが、ビジネスで活用できるようさまざまなAPIやツールが用意されている。

グーグル エンタープライズ部門 シニアプロダクト マーケティング マネージャー 藤井彰人氏

 グーグルの藤井氏によると、Google Maps/Earthの企業向けサービスは、マッシュアップAPIを提供する「Google Maps API For Business」、地理データまで利用できる「Google Earth Pro」、Google Earthを社内向けに構築できる「Google Earth Enterprise」、地理データの処理をグーグル側で行なう「Google Earth Builder」など大きく4つが展開されているという。「昔はAPI経由でのマッシュアップやシステム構築のような方法がメインでしたが、最近はグーグルの計算機資源を用いたクラウド型の利用が増えています」(藤井氏)という。

 こうした地図や地理のデータを活用したGIS(Geographic Information System)のソリューションは以前から存在しているが、「地図を購入する必要があるため、高価で、地図が必須の不動産や研究所、オイル・ガス、行政機関など、ユーザーが限られていました。しかし、Google MapsやEarthの登場で大きく変わっている。知識のない人でも、地図を活用できるようになります」(藤井氏)とGoogle Maps/Earthのインパクトについてこう語る。「80%のビジネス情報はロケーションにひも付いていると言われています。今までExcelのグラフで表現できなかったこうした情報を、地図と関連づける可視化することで、意思決定を迅速に行なえるようになります」(藤井氏)。自分の位置情報がモバイルデバイスで活用できたり、グローバルで利用できるのも大きなメリット。「アムステルダムの地図を日本語で読むことができます。普段、意識しないですが、実は非常に画期的。グローバルでビジネスを展開している会社にとってみると重要です」(藤井氏)。

 Google Map/Earthは逐一バージョンアップされるため、ユーザーが気がつかないうちに使い勝手が大幅に改良されていたり、最新機能やAPIが搭載されることも多いという。藤井氏は、「たとえば、ソーシャルマップのような感じで、ユーザーで地図を作るMaps Makerもありますし、膨大な地理情報の表示を高速化するためにあらかじめレンダリングしておく技術や、スプレッドシートの統計データをインポートしてオンラインで処理し、地図上に表示できるFusion Tablesなど、画期的な機能が次々と追加されています」と説明する。

エンタープライズ事例も続々登場!

 こうしたGoogle Mapsの実力を知るには、なにより事例をチェックするとよい。グーグルのWebサイトにはGoogle Maps API Premierを活用した、さまざまな事例が掲載されている。われわれに身近な事例としては、不動産情報の可視化を実現しているアットホームや「HOME'S」のネクストや、飲食店情報の掲載に用いているぐるなびなどが挙げられる。

 藤井氏が挙げたのは、グアム島での回線管理を担当するNTT DOCOMO Pacificの例。GPSを搭載した車載用端末によって、位置情報を取得し、Google Mapsに表示するという「移動体追尾システム」だ。「最初は社用車の利用管理で導入され、ガソリンの使用量やルートの最適化を進めていたんです。今後、車や従業員、機材などを管理するようです」(藤井氏)。このように従業員向けだけではなく、Google Mapsを顧客サービスに利用する例も増えている。

Google Maps API Premier, Earth Pro/Enterprise(出典:Google エンタープライズ: ユーザー事例)

 最近は売り上げや所得分布、年齢などの顧客情報を地図化し、営業支援システムと連携させるといった例も多い。また、店舗で売れた商品をリアルタイムに地図にポップアップさせるZappos、グローバルでのプロジェクトの進捗を地図に表示する社内ポータル画面を構築している三菱重工業 原動機事業本部、さらにGoogle Earth Enterpriseを導入して災害情報をグラフィカルに表示する危機管理システムを構築した静岡県庁などの事例もある。

 Google Mapsのビジネスは、Google Appsに比べても伸びが著しいという。「Google Maps自体を使っているコンシューマーユーザーがとても多いので、教育がいらないのがメリット。逆にエンタープライズでの利用イメージが沸かないのが課題です」とのことで、業種に特化したデモサイトなどを構築する予定だという。Maps APIの活用を提案できる販売代理店も増えているとのことで、日本でもますますユニークな事例が期待できそうだ。

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