YouTubeは古いものごとを良い方に変えた
―― ところでスティーブ、どうして日本の歌謡曲なんか知ってるの?
スティーヴン 「カ・ヨ・ウ・キョ・ク」……? あ、60sのことね!
Image from Amazon.co.jp |
ベスト・オールディーズ100 |
初めはスリー・ファンキーズ※をYouTubeで見つけて、ものすごく好きになったんです。ぼくはもともとアメリカでもオールディーズが好きで、YouTubeで似たような曲をよく探していた。つまり「TreasureTube」(YouTubeでの宝探し)をしていたら、よく日本の60〜70年代の曲が引っかかってくるようになったんです。そこからすごいがんばって日本語も勉強して。そういう何だか分からない曲の中にいることが好きだったってのもありますけどね。そういえばたしか、(映画監督の)タランティーノも日本の曲や映画が好きですよね?
※ 1960年にデビューした日本の男性アイドルグループの元祖
―― タランティーノ映画だと「Kill Bill」なんかが記憶に新しいですね。
スティーヴン それにぼくは幼いころ、日本のRPGも大好きだったんですよ。当時は日本語も読めなかったから、日本語版しかないゲームはボタンを1つずつ押して「これは何のメニューなんだ?」とか考えながらプレイしたりしてましたけど。
―― なるほどね。ところでスティーヴン、JamCloudをはじめるまで、仕事は何を?
スティーヴン 15年間ずっとプログラマーを。マクロメディア(現在はアドビ)「Director」関係のね。ただ、Flash 6が出てきた頃には、Flashでデスクトップアプリを作る会社に移っていました。
―― JamCloudはAdobe AIRのアプリですね。
スティーヴン JamCloudを作りはじめたときは、ちょうどAIRが出てきた頃だったんです。ただ今後はWebへの移行を考えて、HTML5バージョンも準備するつもりですけど。
―― そういえばPomplamoose※はお好きですか?
スティーヴン あー。はいはい、大好きですよ! JamCloudのトップページに彼女たちのスクリーンショットを載せたんですけど、見ました?
※ Pomplamoose : スタンフォード大学に通っていたジャック・コンテ、ナタリー・ドーンの男女2人組。08年以降、YouTubeを中心に積極的なリリースを続けている
―― まさにそれを見たんですよ。逢ったことは?
スティーヴン ノー。ないです。最初に見つけたときからすごいと思ってましたよ。彼ら、日本でもそんなに有名なんですか?
―― いえ。アメリカでは有名なのかな、と思って。
スティーヴン そう思いますよ。YouTubeのPVがすごいじゃないですか。YouTubeのファンは彼らがどうやって曲を作っているのか(メイキング)を見ていると思うんですけど、そのカットがとにかくクール。それにもちろん、ジャック・コンテはものすごく才能あるミュージシャンだと思いますし。
―― Pomplamooseもそうですが、アメリカでは現在「YouTube Movement」(YouTube生まれのアーティストがムーヴメントを起こすこと)が大ブームになっているんですよね? それがぼくらは気になってるんです。
スティーヴン すごいことですよね。長らく、レコードレーベルが消費者が聴くものを操作する時代が続いてきた。だから、才能があっても聴かれるチャンスはほとんどなかった。でも、インターネットで彼らは次々と見つけられるようになった。そこからレーベルに目をつけられて、有名になることも増えてきた。
たとえばジャスティン・ビーバーなんかがそうですよね※。あと、ジョナサン・コールトン※の曲「Code Monkey」。あれはギークを中心にかなり流行しました。「Portal」というゲームのテーマソングも書いて、それも売れています。そうして今や年間50万ドルのトップスターです。レーベル専属じゃないのに。
※ ジャスティン・ビーバー : Justin Drew Bieber。YouTube出身のカナダの歌手。09年にアイランド・レコードからデビューし、最新アルバムの『My Worlds2.0』は全米No.1のヒットに。17歳
※ ジョナサン・コールトン : Jonathan Coulton。プログラマー出身のシンガーソングライター。仕事をやめ、週に1曲ずつアップロードしつづけて人気を集めていったという。40歳
この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ