中国のスーパーコンピューターの歴史は、1983年の国防科技大学による「銀河I号」(100MFLOPS)に遡る。10年後の1993年に「銀河計算機II型」(1GFLOPS)、さらに1995年に中国科学院より「曙光1000」(2.5GFLOPS)、1999年に国家並行計算机工程技術研究中心より「神威I」(384GFLOPS)が登場し、その後も銀河シリーズは「銀河五代」(2007年)までリリースされた。
曙光も前述の通り曙光5000まで開発し、現在は銀河の国防大学と、曙光の中国科学院、それに神威の国家並行計算机工程技術研究中心が三つ巴の開発競争をしている。京に続く天河一号は、銀河の国防大学が開発したものだ。
スーパーコンピューターの導入が進む中国
中国全土の大都市で、曙光を筆頭にスーパーコンピューターが導入されている。その多くが「Xeon+Linux」の組み合わせだ。眉唾ものなのだが、そもそものスーパーコンピューターやハイエンドサーバーなどの導入が各地で検討され始めた理由が、マイクロソフトが脱海賊版対策として行なった「Windowsデスクトップのブラックスクリーン&海賊版警告文章表示の措置」だというのだ。
一部の中国各地の担当者は「ならばやむなし」と正規版を買ったのに、買ってみれば落ちることが多く「だったらシステムを変えてやる」と思ったそうだ。
そのタイミングの後で、IBMの「地球を、より賢く、よりスマートに」で知られる「SmartPlanet」が中国でもスタートし、中国各地で担当者が関心を持った。
ただ、中国の産業のお約束か、「外国産は高い。中国企業が作った方が安い」とばかりに曙光を筆頭とした中国企業に依頼が殺到したんだとか。
さて、中国がスーパーコンピューターで日本を負かさんと研究開発する目的は、科学技術立国になるためであり、中国国内の気象などを研究するためである。
だが、それだけでなく、中国らしい目的もあるようだ。昨年11月にIT系Webメディア「ChinaByte」が掲載した記事によれば、中国科学院軟件所研究員の張云泉博士はChinaByteの取材に対し、「天河一号により他国に比較的大きな圧力をかけることができる」と答えた。外交カードとしてスーパーコンピューターを使おうというのだろうか。
関係者の鼻息は荒い。中国が開発したRISC CPU「龍心」の設計者である胡偉武氏は、新華社の取材に対して「龍芯を載せて、なおかつハイパフォーマンスを狙う。同じスペックのスーパーコンピューターをIntel製CPUの半分の数で実現させる。2011年末には中国のスーパーコンピューターは外国産CPUとおさらばだ」と強気のコメント。
果たして、これは実現できるか。中国人のネットユーザーの多くのコメントにあった「中国人は口先だけだから……」とならなければいいが。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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