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山谷剛史の「中国IT小話」 ― 第65回

ネット世論の誘導という商売

2010年02月23日 12時00分更新

文● 山谷剛史

IT記者劉靭氏の逮捕を大きく取り上げる記事
IT記者劉靭氏の逮捕を大きく取り上げる記事

 当連載の前回の記事「中国が主張する「言論の自由」とは」(関連記事)で詳しく書いたが、中国では中央政府にさえ触れなければ表現の自由はあり、モノ書きに対して圧力がかかるわけではない。

 それでも「中央政府のことを書かないでも、獄中に入った文筆家はいるだろう」と思う読者もいるだろう。実際いる。たとえば中国におけるITライターで最も有名な劉靭氏は、政府とは関係ないことを書いていたが逮捕された。

 日本のIT系メディアの記事は、CPUやGPUのロードマップや、新製品のレビューが多い。近年は加えてネットのトレンドの記事も増えてきた。一方で中国のIT系メディアで掲載される記事で、ハードウェアのレビューは少なく、むしろIT企業の動向を紹介する記事が多い。中国でITライターの第一人者と認められた劉靭氏も中国IT企業通である。

 08年秋に逮捕された劉靭氏は、96年からIT系メディアで執筆を開始し、98年にはIT系メディアの編集長になり、逮捕前には著名サイトのトップと、著名IT系企業の副総裁を兼職するまでに成り上がった。

 中国各メディアの劉靭氏に関する情報を調べるに、最初は劉靭氏は記者の鏡のような仕事ぶりだったが、メディアひとつ任され権力がつくと、次第に初心を忘れていったことが見えてくる。各IT企業にネガティブな報道を流すと圧力をかけ、掲載しない代わりに口止め料をもらうことが常態化し、ついに口止め料の金銭が動いた瞬間に警察に御用、現行犯逮捕となった。

 筆者と同じ中国のITを扱うライターという意味で劉靭氏を紹介したが、ネガティブな報道の口止め料を請求し捕まるケースは他にもいくつもあり、様々なジャンルの雑誌の中国全土の記者が逮捕されている。中国の、特にネット世論は、一度火がつけば「火消し」をしないと面倒なことになるだけに、文字のパワーに魅せられ、誘惑にかられてしまう記者は少なくない。

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