利便性を損なわないことが重要
今井氏によると、IBM ピークシフトユーティリティーとは2つの大きな違いがあるという。
ひとつはActive Directoryへの対応。IT管理者が一括で社内のパソコンにポリシーを配れる。設定はグループ単位で変えられるので、例えば部署単位でピークシフトする曜日を決めたり、ピークシフトをさせないなど細かな指定ができる。
ちなみに、電源スケジュール機能は、バッテリーを持たないデスクトップ(ThinkCenterなど)でも利用可能だ。ピークシフトは節電というよりは、電力消費を平準化するのが目的だが、電源スケジュールは単純な節電対策としても役立つ。業務でパソコンを使わない昼休みは、スリープに入る時間を短くしたり、ディスプレーの明るさを最小に落とすなどしておけばいい。
もうひとつが利便性を損なわない配慮。簡単に言えば、ピークシフトしては困るマシンでは自動的に、その機能を無効化できる。
例えば営業マンが午後からの商談にノートを持っていこうとしたら、バッテリーがほとんど残っていなかったというのでは仕事にならない。電源スケジュールの編集画面では「ピークシフト機能を無効にする」ための条件も指定できる。操作はチェックボックスを選択するだけだ。
現状では2種類の条件が指定可能。ひとつは単純に「バッテリー残量が指定した値」(例えば10%以下など)より低い場合。もうひとつはソフトが自動的にユーザーの利用状況を監視し、過去2週間の履歴からバッテリーを良く使用するユーザーだと判断した際に、自動的にピークシフトの設定を切るというものだ。サスペンドやレジュームの頻度、ACアダプターの抜き差し回数などから類推する。
パソコンの利用スタイルは同じ会社でも事務職か営業職かなど、人や部署で大きく異なる。この部分を配慮している点は親切だ。特に自動的にピークシフトしない設定にできる点に関しては、他社PCのピークシフトにはない機能としてアピールしていきたいという。
なお、ピークシフトを利用すれば、おのずとバッテリーの充放電の頻度が増す。これが「バッテリーの劣化を早めるのではないか」と聞かれるケースも多いそうだ。
今井氏によると、バッテリーの劣化が進む要因としては「サイクル回数」や「保存劣化」といったものが挙げられるという。サイクル回数とは充放電を何回繰り返したかで、この回数による劣化は起こりうると今井氏は話す。ただし、バッテリーにとっては使わないでいることも問題である。特に100%の充電状態が長時間保持されることは好ましくない。
回答としては、利用条件によって結果は変わってくるため、一概には判断できないが、定期的に充放電を繰り返すことによる問題はそれほど大きくはないという見解のようだ。