結局はソフトメーカーの信頼性
3年という長期間にわたってパソコンの安全を任せられるのか? 「ただ」で使えるソフトに新種マルウェアが捕まえられるのか? この2つの異なる疑問は、実は同じことを問うている。それは、セキュリティーソフトを開発・販売するソフトメーカーに対する信頼だ。
各社が配布している期間限定の試用版をひととおり使えば、使い勝手などからおおよその傾向はつかめる。だが、ソフトメーカーの信頼性を見るには、もっと簡単な指標がある。ソフトメーカーのウェブサイトに行き、機能の説明や優位性がきちんとした日本語で書かれているか? を確認すればいい。
セキュリティーソフトのほとんどは海外製だが、しっかりしたソフトメーカーであれば、国内法人やセキュリティーセンターを設けており、日本ローカルなマルウェアへの対応やトラブル発生時のサポート面で安心できる。逆に「PC Tools」のようにソフト内の日本語表記が文字化けしているようでは、ローカライズが不完全と言っても過言ではなく、コンシューマーユーザーに安心して勧められない。
価格の安さや、検出率の高さ、スキャン処理の高速性能(システムに与える負荷の低さ)といった項目で、「業界No.1」であることを過度にアピールするセキュリティーソフトも避けた方がいい。単一の性能が突出するということは、そのほかの性能が劣っているとも言える。単一性能を競った時代はすでに過去のもので、これからは使いやすさを含めたトータルバランスを評価しなければならない。
ユーザーがセキュリティーソフトに求めるものは「安全」と「安心」なのだが、残念なことに無料のセキュリティーソフトは、安心を欠くものが多かった。
メーカー側では機能の高低別に、2ないしは3種類のソフトを出しているが、そのうち無料で提供されているのは「最も低機能のセキュリティーソフト」だ。ソフトメーカーの宣伝広告の一環として「ただ」で配られていることもあり、当然のことながら、上位版への「有償」アップグレードを促す広告が表示される。我慢できる程度の広告だが、中には「このままではパソコンの安全が守れない」といったような、ユーザーの不安を煽る表示もあったのはいただけない。
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2011年版セキュリティーソフトをひととおり眺めてみると、共通するキーワードは「クラウド」になる。しかし、一口に「クラウド対応」と言っても、実際の処理内容はかなり異なっている。特にクラウド対応を大きく謳っていない製品でも、個々のセキュリティーソフト経由で情報を吸い上げ、それを集約して機能向上に役立たせているものもある。
独創的な機能を持つセキュリティーソフトもあるが家庭内で普通に使うのであれば、それほど高度な機能はいらない。結局のところ目的はひとつなのだから、どれも似通ったものになる。安全と安心を満足させるのに十分なら、あとはメインウインドウの見た目や好き嫌いで選んでもかまわないのだ。
筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
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