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次世代を支えるシャープのLED技術(前編)

LED電球の現在~シャープはなぜ取り組むか?

2010年03月30日 17時30分更新

文● 秋山文野、遠藤諭、写真●鉄谷ヤスヒロ

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選べる、使えるLED電球

 2009年はLED照明に対する関心が大きく高まった1年となった。

 「E26」という一般家庭に広く普及している「電球の口金形状」に合う製品が各社から発売され、家庭用照明器具として選択肢に加わったのだ。白熱球は2012年までに製造中止に向かうため、市場背景としても、照明を考え直し、置き換える気運が高まっていた。

 とはいえ2009年前半の時点では、LED照明に対する理解はそれほど進んでいなかったとも言える。白熱球や電球型蛍光灯のように十分な明るさを得られるか? 光の直進性が高いLEDでは、部屋全体を明るく照らす必要がある家庭用照明に向かないのでは? というイメージ上の問題もあり、LED=家庭用照明器具という認知は浸透していなかった。

 そこに、電球形LED照明の普及モデルを引っ提げて参入したのが、シャープだ。大手家電メーカーとしては最後発となったが、LED電球の販売価格を大幅に引き下げ、市場に旋風を巻き起こしたのだ。

DL-L601NとDL-L601L

 2009年夏にシャープが投入したE26対応、DL-L601N、DL-L601Lは、1個4000円程度と競合製品の半額近い値付け。さらに、昼白色相当のDL-L601Nで560ルーメンと発売当初は業界トップクラスの明るさを実現した。LEDで白熱球を置き換えるという選択をぐっと現実的なものにした。

 さらにLED電球の魅力を実感できるのは、2009年後半から相次いで発売されたE17口金対応の製品だろう。

 E17口金のミニクリプトン球は、廊下や階段のダウンライトなどで使われていることが多い。LEDは電源を入れればスグに安定した明るさとなるため、頻繁に点灯・消灯を繰り返す用途に向いている。また、取り付け・取り外しがしにくい場所に設置されていることも多く、長期間交換なしで使えるというのは大きなメリットになる。

DL-J40ANとDL-J40AL。右側は一般的なクリプトン球。

 また、埋め込み式ダウンライトは照明器具そのものののサイズもコンパクトである。口金が合っていても電球が器具に収まりきらないことがよくあった。特に横向きに電球を取り付けるタイプでは、その傾向が強く、製品選びは意外にシビアだ。シャープのE17対応製品DL-J40AN/DL-J40ALは、口金サイズだけでなく最大径と全長も一般的なミニクリプトン球と同じで、置き換えやすい点が受けた。

 そしてシャープLED電球の認知を一気に押し上げたのは、独自の7段階調光・調色機能を持つ「DL-L60AV」だろう。

DL-L60AV。電球なのにリモコンが付属する

 電球単体で昼白色から電球色まで対応。電球でありながら、赤外線リモコンが付属し、手元で明るさや色合いを調整できる。照明器具に調光機能がなくても、LED電球だけで生活シーンに合わせて7×7通りもの色合い、明るさを得られるのだ。現在この調光・調色機能を持つ製品を販売しているのはシャープだけである。

 LED電球は白熱球とは形状が異なり、半球状のため、光が広がる範囲がもともと小さい。さらに、直進性が高い性質のため、電球の直下では明るさを実感できるものの、部屋全体では「白熱球より暗い」という印象を与えがちだった。

右側の2つがDL-L81ANとDL-L81AL。大きさのイメージは左側にあるE17口金タイプの2製品と比較することでお分かりいただけるだろうか?

 2010年3月、シャープはヒートシンクの形状を工夫したボール型電球「DL-L81AN」「DL-L81AL」を投入。発光部分がより球形に近づき、面積が拡大したこと、カバー内側に拡散塗料を塗布し、光を拡散させることで、部屋の広範囲に光が回る「ワイドな明るさ」を実現したのだ。これにはLED AQUOSのバックライトで培った技術も応用されているという。

 全光束もシャープ製品としてはトップの730ルーメンを実現。LED電球は暗い、というイメージを完全に払拭した。

LED電球選びのポイントは?

 照明器具を評価する基準はいくつかある。

 ひとつは、「明るさ」。これはルーメン(光束)で表す。60W白熱球の明るさは810ルーメンであり、LED電球はそこへ向かって各社競い合っている。

 ここで注意しなければならないのは、360度すべてにまんべんなく光が回る電球とは異なり、LED光源は直進性が高いことだ。仮に電球直下での明るさが60W電球と同じであっても、部屋全体を隈なく照らせるかどうかは製品によって違いが出てくる。例えばスポットライト的に電球直下だけが明るく、周囲は暗くなる製品もある。

 本文で述べているようにシャープは、電球を覆うカバー内側のコーティングを工夫して光をうまく拡散させる方式をとっている。電球直下に比べ周囲が暗いメーカーの製品よりも利便性は高いだろう。明るさそのものは譲るが、LED電球の特徴である消費電力の低さを重視しているメーカーもあるが、基本は明るく、光がよく回る製品を選ぶのがいいだろう。

 もう一つこだわりたいのが「色の自然さ」「演色性」の高さである。

 演色性とは、太陽光で物を照らした場合の色の見え方を基準に、色の再現性を評価する基準だ。JIS規格では7種類の色の見え方を平均し数値化した「演色評価数」が定められている。

 白熱球は演色性100で、色の再現性が高い。普及している三波長発光形の蛍光灯は84程度。LED電球ではこれを上回る、演色性90程度の製品を実現できる。色がきれいに見える照明なのだ。

 ちなみに色の見え方は光源の色によっても異なる。昼白色などと呼ばれる太陽の色温度に近い色のほか、タングステン光などと呼ばれるより赤みがかった光源もある。演色性はこういった光源ごとに定められている。

 LED電球にも昼白色と電球色の二種類がある。光の色も生活空間を構成するうえでは重要な要素だ。1本で昼白色と電球色に対応し、明るさの調整も可能なシャープの電球はその意味で面白い製品だ。

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