決済はクレジットカードのみ
今回、決済方法をクレジットカードに限定している点も興味深い。
ひとつは、新聞販売店を通さない「直販」商品としているという観点からだ。クレジットカード決済は、日本経済新聞社との契約になる。
日本経済新聞社でも、「電子版は再販商品ではなく、直販商品。従って、購読者に対する1000円という購読料も、景品表示法などにあたるものにはならない」と説明する。
電子版は、もちろん日本経済新聞社から直接、読者に情報を配信する仕組みとなっている。販売店を経由するものはなにもない。そのため、新聞では販売店を通じて、配達先の地域の広告が折り込まれるが、電子版ではそうした配信がなくなる。新聞社と販売店との関係についても、新たな関係が模索されるきっかけとなりそうだ。
2つめは、クレジットカード決済ということは、電子版が、あくまでも個人読者を対象とした姿勢を打ち出すことにつながる点だ。
日本経済新聞は約310万部の発行部数を誇るが、そのうちの約7割が個人読者。電子版のターゲットはまずここになる。もちろん、次のステップでは、企業向けへの対応が図られることになるだろうが、回覧されることが多い企業よりは、まずは一部一人の読者スタイルが前提となっている個人読者への展開によって、ノウハウ蓄積を優先することになる。
だが、いまの段階でも、企業で有料購読ができないわけではない。コーポレートカードを活用してクレジットカード決済をすることも可能だからだ。
しかも、今回の会見では触れられることはなかったが、いまのところ、付与されたIDを複数の人が利用しても、ある程度の人数までは、同時アクセスが許される構造となっている。一定の人数を超えた場合には、後からは入れないという仕組みだ。これも企業での利用を想定した使い方だといっていい。
企業ユーザーの利用を限定した上で、今後、企業における利用に向けた仕組みをどう構築していくかが注目されよう。
この連載の記事
-
第35回
ビジネス
首位を狙わないキヤノンのミラーレス戦略 -
第34回
ビジネス
NEC PCとレノボの合弁はなぜ成功したのか? -
第33回
ビジネス
シャープ復活の狼煙、その切り札となるIGZO技術とは? -
第33回
ビジネス
任天堂はゲーム人口拡大の主役に返り咲けるのか? -
第32回
ビジネス
日本IBMの突然の社長交代にみる真の狙いとは? -
第31回
ビジネス
脱ガラパゴス? 国内TOPのシャープが目指す世界戦略 -
第30回
ビジネス
これまでの常識が通じないAndroid時代のインフラ開発 -
第29回
ビジネス
ビッグデータは我々になにをもたらすのか? -
第28回
ビジネス
Macの修理を支える、老舗保守ベンダーが持つ“2つの強み” -
第27回
ビジネス
スマホ時代に真価を発揮する、多層基板技術ALIVHとは? -
第26回
ビジネス
富士通が「出雲モデル」「伊達モデル」を打ち出したこだわりとは - この連載の一覧へ