虹彩絞りの有無でボケ味はどれだけ変わる?
次は、花をクローズアップ撮影し、ぼけ味や色みの再現の違いを見てみた。画質はいずれも24Mbpsで、撮影モードはオートとしている。
歴然とした違いが出てしまうのは、やはり虹彩絞りの搭載の有無。ソニー「CX550V」とキヤノン「HF S21」が虹彩絞り搭載に対し、「ビクターHM1」は一般的なビデオカメラ用の絞りなので、奥に見えるピントの外れた花がはっきりと絞りの形そのままの菱形になってしまっている。
こういった映像は、人物にピントを絞って背景をぼかすといった静止画撮影でよく行なうもので、ビデオカメラではマニュアルで絞り優先の撮影をする必要があり、誰もがよく行なう撮影ではないが、比べてしまうと虹彩絞りは欲しくなる。デジタル一眼レフカメラとの差別化の点でも、これは上級機では重要なポイントになりそうだ。
色再現の違いは各社ではっきりと傾向が分かれたのが興味深い。見た目の色にもっとも近いと感じたのがソニー。特に細かい色の違いが明瞭で、花びらの質感までよく伝わる。特にやや暗い部分のしっとりとした色の再現が見事だ。
緑や青の再現は自然な傾向だったキヤノンだが、赤の再現ではややマゼンタに寄る傾向がある。これは人の肌の色再現を重視した画作りが理由だと思われる。赤色をややマゼンタに寄せると、肌色の黄色はややピンク寄りになり、健康的な色に感じやすいためだ。とはいえ、この映像に関しては、花びらの質感などは十分だが、本来朱色だった花びらの明るい部分がピンク寄りになり、きれいではあるが見た目の色とは少々違ってしまった。
ビクターは前述の通り、背景のぼけ味が見劣りを感じてしまう。色は明るく鮮やかな傾向で、暗くなる部分もわりと明るめに描写する。そのせいか、色の濃淡の再現の幅が狭く、花びらの色の微妙な違いが埋もれがち。パッとみたときに華やかさはあるのだが、もう少し暗部の沈んだ色も出てほしい。
夜景をもっとも自然に撮れるモデルは?
夜景など低照度な場面の撮影も各社が力を注いでいる部分。今回は撮影モードを「夜景モード」に固定して撮影してみた。夜景モードは露出をややアンダーにして、見た目のままの夜の景色を撮影するモード。全体に黒は沈みがちになるが、オートモードなどと違って感度アップをしないので、ノイズの発生を抑えられる。ここでは、ライトアップされた城壁と、夜空や屋根瓦などの暗部の再現性を見比べてみた。
低照度に強い「Exmor R CMOS」センサー採用のソニー CX550Vは、白壁の質感や沈み気味の屋根瓦の質感もかなり明瞭に描いた。ノイズ感も少なく、コントラスト感のある映像だ。
白壁がもっとも明るく、その分夜空や暗部の沈みも大きかったのがキヤノン。メリハリのある映像なのだが、他と比べるともう少し暗部の見通しが良いと良かった。
ソニーと同じく裏面照射型CMOSセンサーを採用したビクター HM1も暗部の再現は良好。ただし、ソニーやキヤノンがライトの色味の違いを比較的はっきりと描き分けたのに対し、HM1ではライトの色味の差を少なく再現したため、印象はやや異なった。白壁の陰影や質感などはしっかりと再現されているので、画作りによる個性の差が出たようだ。
サンプル動画の元ファイルのダウンロードは以下からできます
この連載の記事
-
第5回
AV
これは必要! 何かと便利なビデオカメラアクセサリー -
第4回
AV
スナップ撮影もフルHDで! 1~5万円で買えるビデオカメラ -
第3回
AV
ミドルクラスは使い勝手で選ぶ! HDビデオカメラ操作比較 -
第1回
AV
2万円台からフルHD!? 最新ビデオカメラのトレンドをチェック -
AV
どれがいい? 春の最新HDビデオカメラ徹底比較! - この連載の一覧へ