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2010 International CESレポート Vol.4

レノボ担当者に直撃! 新ThinkPadとSmartBookの秘密

2010年01月11日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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パソコンに満たせぬニーズを埋める「Skylight」

 続いて紹介する2つの製品は、まず「SmartBook」という存在について理解せねばならない。SmartBookはその名のとおり、ネットブックに影響されたネット端末のこと。簡単に言えば「x86 CPU+Windows」にこだわらず、Qualcommの「Snapdragon」やFreescaleの「i.MX515」といった組み込み機器向けCPUを使い、OSにLinux系OSを採用した機器である。日本でいえば、シャープの「NetWalker」がSmartBookにあたるだろうか。

10インチディスプレー搭載のSmartBook「Skylight」。とにかく薄く、軽く作られているが、キーボードとタッチパッドは大きく、操作感がいい。カラーは青と赤

 レノボの新製品のひとつ、「Skylight」はまさにSmartBookだ。CPUにはSnapdragon(1GHz)を採用、10.1インチサイズのディスプレーと快適なキーボードを備えていながら、「最厚部」でも18.2mm、2ポンド(約907g)以下と薄型軽量なボディーになっている。しかも、バッテリー駆動時間は10時間以上(米国カタログ値)と、モバイル機器としてなかなか魅力的だ。

おおむね18mm弱の薄さに収まっている

おおむね18mm弱の薄さに収まっており、ディスプレー部も大きく開ける。小容量・薄型のバッテリーを採用しているためだ

 だが、レノボといえば「PC」の企業。ネットブックからデスクトップ代替ノートまで、さまざまなものを作っているのに、なぜここでSmartBookなのだろう? 開発を担当した、Lenovo Innovation Centersプログラムマネージャーのケビン・W・ベック氏は、狙いが「隙間とニーズにある」と話す。

ベック氏「ネットブックもいいし、フルサイズのノートももちろんいい。ですが、それだけではすべての人のライフスタイルをカバーできるわけではない。だから、ネットブックより気軽に使えて、軽くて、必要なことだけができるものを作ったのです」

 ライフスタイル重視という発想の方向性は、ソフトの実装を見るとよりはっきりする。Linuxではあるが、どこかのディストリビューションをそのまま入れた「PCライク」な作りではない。レノボがシェルやランチャーなどの「上物」をすべて作り、利用者はLinuxであることを意識する必要はまったくない。それどころか、「PC的なこと」を考える必要はないのだ。

ベック氏「この製品では、内蔵ストレージにユーザーディレクトリを作って設定を保存したり、アプリケーションの設定をしたり、といったことをしません。OSや各種設定は内蔵のフラッシュメモリー(8GB)に読み込まれますが、ユーザーからはまったく見えません。ですので、フォルダーや設定の管理もまったくない。すなわち、日々のメンテナンスは存在しない、ということです」

「プライベートなユーザーデータは、内蔵のmicroSDカードに自動的に書き込まれます。機器が壊れたり買い換えたりした時でも、それを抜いて新しい機器に差し替えるだけでいいのです。シンプルでしょう?」

キーボードとディスプレーの間には、隠れるように携帯電話のSIMカードとmicroSDカードのスロットがある

キーボードとディスプレーの間には、隠れるように携帯電話のSIMカードとmicroSDカードのスロットがある。個人情報や設定情報はmicroSDに保存されるので、これさえ入れ替えれば「自分のSkylight」になる

 となると、気になるのは「どうやってPCとデータをやりとりするのか」ということ。方法のひとつは、ウェブアプリケーションやネットストレージ。ドキュメント系はこちらが中心かもしれない。だが、音楽・映像を含めた大容量のファイルについては、もう少し直接的な方法が用意されている。

ベック氏「microSDとはまったく別に、USBメモリーを内蔵できるようになっています。この機構は『FlipJack』と名付けました。あくまでUSBメモリーですから、こちらは、PCで使うものと同じ構造。音楽や映像を取り込んで差し込めば、すぐにSkylightで楽しめます。現在は4GBと8GBのスティックを用意していますが、16GBのものも開発中です」

主にAVファイルのやりとりを想定して作られた内蔵USBメモリー「FlipJack」。ファイルフォーマットは当然FAT32。そのまま本体にすっぽり収まるようになっており、美しいデザインを維持できる。容量は最大8GBだが、今後16GBのものも出荷予定があるという

 SDメモリーカードスロットがあるので、データ交換にはそちらを使ってもかまわないし、外付けUSBも利用できる。だが内蔵デバイスで簡単に使う手段を、レノボとしては訴求したいようだ。

ベック氏「コンセプトとして『インストールをする必要がない』という考え方です。現在は18個のウィジェットを標準搭載しています」

「基本画面を僕たちは『6 Spaces』と呼んでいます。よく使うウィジェットを6つ並べておいて使う、というコンセプトです。ひとつのウィジェットをメインで使いたい、と思ったら、そのウィジェットをクリックする。すると拡大され、広い画面で使えます」

「ですが拡大時にも、右には2つのウィジェットが表示されます。いつもチェックするウィジェットは、ここに残るように設定しておけばいい。この画面を『3 Spaces』と呼んでいます。よく『Facebookを1時間おきにチェックしないと落ち着かない』とか『Twitterは常に見ていたい』という人がいますよね? これはそんな人のための機能です」

「Skylightは3G通信機能と無線LANを内蔵しており、常に通信を待ち受けているので、メールやメッセージングを見逃さずに、すばやく使えます。このあたりはPCと違うところです」

 PC的な操作流儀を重視していないため、Skylightの画面は基本的に、写真のように「6分割」が基本だ。いかにもタッチで操作できそうに思えるが、Skylightはタッチセンサーを内蔵しておらず、PC風にキーボード+タッチパッドでの操作となる。

 各アプリケーションはいわゆるウィジェットであり、GmailやFacebook、Twitterなどのほか、アマゾンの音楽配信「Amazon MP3」にアクセスして、音楽を買って楽しむ機能まである。ウェブブラウザーはFirefox。こちらは単独のアプリケーションだが、操作感覚はウィジェットにあわせた実装になっているようだ。

Skylightの基本画面

Skylightの基本画面。6つのウィジェットを選んで使う構成で、最大化せずに利用することも可能だ

Firefoxを最大化して使った画面

Firefoxを最大化して使った画面。右にGmailとTwitterのウィジェットが表示されているが、これは「常時表示するウィジェット」に選んでいるからだ

 試用した限りでは、各ウィジェットの切り替えが少々遅いように思えた。だが、短時間の操作で感じた不満はその程度のもので、いったん切り替えてしまえばかなり快適。表示も相当にきれいだが、もたつきなどは感じなかった。ちなみに、ディスプレーの解像度は1280×720ドットだ。

 CPUにSnapdragonを使っていることや、ネットありきの設計であることなどから、Skylightは3G通信機能を内蔵している。販売形態も通信事業者とのバンドルが基本となる。価格は通信契約なしの状態で499ドル(約4万6158円)からと、なかなか魅力的だ。

 現在は英語版のみであり、4月にアメリカでの出荷を予定している。その後、2010年後半に欧州と中国での出荷が予定されている。ベック氏によれば、「日本での市場投入も予定しているので、その時にはきちんと日本語化していきます。お楽しみに」とのこと。現在のネットブックと同じようなビジネスモデルで販売されることになれば、かなり魅力的なガジェットになりそうだ。

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