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3D映画「アバター」の魅力、プロデューサーが語る

2009年11月07日 12時00分更新

文● 千葉英寿

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3Dカメラはソニーのカメラを元に独自開発
3D映像は「技術」ではなく、むしろ「哲学」

―― 同時制作されているゲームとの関係について聞かせてください。

映画「アバター」プロデューサーのジョン・ランドー氏。20世紀フォックス社の副社長を務め、「ダイ・ハード2」や「スピード」の制作総指揮を担当した

ジョン われわれが求めたのは、映画のストーリーをゲーム化することではありません。ただのライセンスではなく、自分なりのフランチャイズができるということでした。

 彼らからゲームのストーリーに全天候対応の車両を登場させたいと言われたとき、映画のチームが「自分たちにデザインをやらせてくれ!」と言ったほどです。車両は映画のバックグラウンドにも登場します。ビデオゲームはアバターの世界を広げるてくれるものなんです。


―― 3D映像技術についてお聞かせください。

ジョン アバターがほかの映画と一線を画しているのは、「技術」ではなく「哲学」だということです。3Dだと「何かが飛び出してきて驚く」とか、こけ脅しと見られてしまうところがあります。それでは観客は劇場にいることを自覚してしまいますよね。そうではなく、スクリーンを消すことができたら、実際にその場にいるように観客に感じさせることができたら。それがわれわれの(3D映像への)哲学的なアプローチでした。


―― 3D映像の撮影のためにカメラを独自開発したと伺いました。

映画撮影中のキャメロン監督。肩にかついでいるのが特製の3D用カメラ

ジョン 撮影にはソニーと独自開発したカメラを使っています。「F900」というモデルをより小さく軽量化したものです。3D映像を撮るためレンズを並べるときになるべく幅を寄せたかったことと、持ち運び性を考えたためです。

 カメラだけでなくリム(カメラを載せて、操作するための機材)部分も新たに開発しました。人間の視覚、目の動きをシミュレーションするプラットフォームを開発することで、何かに焦点を当てるときに「目が寄るように交錯気味になる」といった動きを自在にコントロールできるのです。

 これで「インターオキュラー」という行為も可能です。簡単に言えば、レンズ間の距離を操作出来るものです。3Dなので、観ているときに負担がかからないよう、距離が短くなったり長くなったりするシステムです。数値ゼロが2Dで、そこから離れるほど3Dに近づいて行くわけです。


―― 3D映画の展望についてお聞かせください。

ジョン ここ数年で、世界規模で3Dが受け入れられているという印象です。本作を制作しているときは米国で1000スクリーン、世界で2000スクリーンぐらいと思っていましたが、いまでは米国では3000スクリーン、世界では5000スクリーンにもなっています。これはなぜか? それは、みんなが3Dで観たいと思っているからです。


―― 本作のストーリーには強いメッセージ性を感じます。アバターを通じて何を訴えようとしているのでしょう?

ジョン 私はフィルムメーカーの責任の1つとして、人に色々と考えさせるような作品づくりをしなければならないと考えています。ただし、人によって感じ取るメッセージは異なります。異文化同士のコミュニケーションに興味がある人もいれば、環境問題に興味がいくこともあるでしょう。本作を観ている時は思いっきり楽しんでいただき、一歩劇場の外に出たらそういったことを考えるきっかけになってくれればと思っています。

この映画の「アバター」という考えをきっかけに、様々な問題に目を向けてほしいと語る


―― 本作にはとくに原作があるわけではありません。そこに大きな額面を投じるのはリスキーとは感じませんか?

ジョン ノー! むしろ逆だと思います。こんなにエキサイティングなプロジェクトはありませんよ。観客はテレビ番組をベースにしたものや、シリーズものを観たいわけではありません。そんなものには飽き飽きしていて、新しいものを待ちかねています。

 映画人としては、家を出て劇場に来ていただくためのきっかけを作らなければいけない。新しくてフレッシュなもの、ごちゃごちゃした状況を打ち壊すようなユニークなものを生むべきです。それこそが「タイタニック」であり、「アバター」なんだと思っています。


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