ビジネスプロジェクターを購入する際に注意したいポイント
(1)表示デバイス──基本は3種類、LCOSの普及が進む
まずは製品群を、表示デバイス別に区分してみよう。現在の主流は透過型LCDタイプ(液晶プロジェクター)と小型化が比較的容易なDMDタイプ(DLPプロジェクター)の2種類。2009年に入ってからLCOSタイプ(Liquid Crystal on Silicon)の製品も低価格化が進み、AV用途だけでなくビジネス用途の製品でも搭載されるケースが増えてきた。
透過型LCDは、RGB各色に個別のパネル(フィルター)を採用する3LCDタイプが主流。リアルな色再現性や高い階調表現を実現できるのが特徴だ。ただし光学系が若干複雑で、ボディーがやや大きくなりがちになる点がデメリットだ。
DLP方式は、各画素に電子制御で可動式するマイクロミラーを敷き詰めた「DMD」(Digital Mirror Device)と呼ばれる素子を使用する。LCD方式に比べて光学系をコンパクトにできるのが特徴だ。コントラストに優れ、反応速度が速いため、動画再生にも向いている。
ただし、RGB三原色をカラーホイールで時分割式に表示する原理上、光源の輝度が同じでもLCD方式に比べて暗くなる傾向にある。上級機では、カラーホイールを用いずにRGBにそれぞれ個別のDMD素子を持たせた製品もあり、フィルムを使わないデジタル上映の映画館などで主に用いられている。
LCOSは、素子上にミラーとLCDを重ねて作り込んだ反射型素子で、D-ILA(ビクター)やSXRD(ソニー)などとも呼ばれる。光源の光をミラー上のLCDが反射して投影する。反射率と応答性の高さが特徴で、次世代プロジェクターの主流になると見られている。事実、各社から業務用プロジェクター、業務用リアプロジョンTV、デジタルシネマなどハイエンドクラスの製品が販売されている。
一方で、低価格モデルにも採用が始まっており、LED光源との組みあわせで電池駆動が可能なポケットサイズのプロジェクターにもLCOS方式のものが登場している。DLPプロジェクターと同様に、高級機ではRGBそれぞれに素子を配置した「3板式」、低価格機ではカラーホイール(もしくは後述する「LED光源切り替え」)による「単板・時分割方式」となっている。
(2)光源──モバイル向けではLEDに注目
光源に関しては、高圧水銀ランプが現在も主流だが、小型/モバイル機においてはLEDの採用が進んでいる。
水銀ランプ搭載ビジネスプロジェクターの多くが輝度2000~3000ルーメンという明るさなのに対し、LED機は100ルーメン程度と、光量の点では水銀ランプには及ばない。しかし、省電力&小型化という特徴を生かして、今後はLED化が進むと予想される。
LEDの高輝度化でメリットがあるのはDLP方式やLCOS方式のプロジェクターだ。RGB各色のLED光源を持たせることで、カラーホイールを省略できる。すでにLCOSを用いたポケットプロジェクターのほとんどが、LED光源の高速切り替え方式を採用している。
水銀ランプの寿命は2000~3000時間程度(輝度が半減するまでの時間)となっている。最近はほとんどの製品がランプユニットを容易に交換できる構造だが、プロジェクター用交換ランプはかなり高価だ(実売価格で4~5万円程度)。会議などで頻繁に利用するなら、交換ランプの価格や寿命も確認しておく必要がある。
なお、最近の水銀ランプ採用製品のほとんどが「ECOモード」を搭載している。これは、若干明るさを下げて投影すること(75~80%)で、電力消費を抑えられる機能。ランプの寿命も2~3割伸ばすことができる。
一方LED光源の寿命は2万時間以上と、水銀ランプのほぼ10倍。低消費電力に加えてランニングコスト面でも大きなメリットとなる。
今後登場してきそうな光源としては、LEDよりもさらに明るく、光学系も単純で済み、RGB切り替えも高速な「レーザー光源」が挙げられる。高輝度な緑色レーザーが開発されていなかったため製品化には至らなかったが、今年になって数社が開発に成功したといわれている。
数年のうちにはレーザー光源を用いた超小型プロジェクターが登場するものと期待が寄せられている。
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