「CDP」により最新のレプリケーション技術
これまでバックアップの目的や要件を整理しながら、ストレージのレプリケーション技術について紹介してきた。よりミッションクリティカルな業務ほど、直近のリカバリポイントを保持し、かつ迅速にリカバリできる仕組みが必要である。
一方で、アプリケーション静止点を持ったリカバリポイントも含め、複数の(かつ過去にさかのぼれる)リカバリポイントを用意できると、より災害や障害に対する備えとして万全となる。こういったニーズを実現するのが、「CDP(Continuous Data Protection)」という連続的なデータ保護方式だ(図6)。データベースのジャーナルログのように、更新データを連続的に保持することにより、直近から保持している更新データの範囲内で無数にリカバリポイントを持つ理想的な仕組みである。
現在販売されているCDP製品の多くは、ソフトウェアとして実現しているため、サーバの負荷が大きな懸念となり広く普及しているとはいい難い。これに対してEMC RecoverPointは、SANのレイヤでデータをレプリケーションして専用のサーバ(アプライアンス)がデータ処理を行なうため、サーバへの負荷を最小とした拡張性の高いアーキテクチャを採用している。加えて、ストレージの機能に依存していないため、異機種のストレージ間でのローカルやリモートのレプリケーションを実現している(図7)。
今回解説したリモートレプリケーション構成においても、CDP技術を併用することにより多くのリカバリポイントをリモートサイトに保持可能で、新たな災害対策ソリューションとして注目されている。
ここまで3回にわたって、バックアップ・リカバリ・レプリケーション技術について、ストレージを中心に解説した。企業においては、情報システムや電子データの重要度がますます増しており、これらの仕組みや機能は欠かせないものとなっている。
北米ではおもに金融機関を対象とし、情報システムに対する災害対策の法制化に早くから取り組んでいる。そのため、最近では特定の重要システムには3つのサイトを用意し、1つのサイトが被災した場合も、残りの2つのサイトで継続的に災害対策を行なうケースも増えている。国内についても、このような海外の動きに追従することは間違いない。災害対策を含むバックアップ・リカバリ技術がIT管理者にとって必須の知識となる日も、そう遠くないはずである。
次回は趣向を変えて、ストレージの階層化について解説しよう。
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