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新世代ストレージ戦国時代 第1回

iSeries投入で本格ストレージソリューションを展開

BeastやBoyは何者?ネクサンのストレージを完全解剖

2009年06月29日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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消費電力低減の鍵はシャーシ設計にあり

 アンチバイブレーションデザインは高密度・高信頼性を追求したSATABeast/SASBeastならではの技術だが、SATABoy/SASBoyにも搭載されている技術として電力消費を抑える「AutoMAID」が挙げられる。MAIDはMassive Arrays of Inactive Disksの略で、ディスクアレイでは特定のHDDにアクセスが集中するという統計的な事実を基に、HDDの回転を低減したり場合によっては停止することで、電力消費や部品の劣化を抑える技術を指す。ネクサンでは、このAutoMAIDを利用し、3つのレベルの電力削減を実現している。

 具体的にはHDDのヘッドを待避させる「レベル1」でアイドル時に比べて最大20パーセントのセーブ。レベル1に加え、HDDの回転数を4000回転に落とす「レベル2」で最大40パーセントのセーブ、そして回転自体を停止する「レベル3」で最大60パーセントのセーブが実現するという。もちろん、レベル2では15秒以内、レベル3では30秒以内という復帰時間がかかるという条件はあるが、電力の削減効果は劇的だ。

 こうしたHDDの消費電力技術もあるが、前述した空冷や振動に配慮したシャーシ設計が省電力を大きく貢献しているという。秋山氏は「通常、同じ構成で1500Wくらいの消費電力が、うちの製品では700~800W程度で済みます。今までは私もこうしたディスクアレイ装置はHDDが電力を食っていると思っていましたが、弊社の製品を見て、実はHDD以外のシャーシ側の電力消費もかなり大きいということがわかりました」(秋山氏)と話す。

 さまざまな独自技術を筐体に盛り込めるのも、冒頭で述べた通り、自社での開発体制が充実しているからだ。「現在はシャーシ設計を外注しているところがほとんどですが、うちは細かいレベルまで手を入れられます」(秋山氏)とのこと。少ないコストで、高いパフォーマンス・信頼性を得られるということで、巨大なデータを扱う医療機関や研究所においては、大手のストレージベンダーを押しのけて採用されることも増えているという。

ストレージソリューションをプラスする
新製品「Nexsan iSeries」とは?

 このように、ネクサンはこれまで高速で信頼性の高いディスクアレイ装置のみを提供してきた。そのため、現在多くのストレージベンダーが力を入れる仮想化やスナップショットといったアプリケーションや管理技術には、今まで進出してこなかった。しかし、昨今顧客が増えるとともに、複雑なストレージソリューションを要求されるようになってきたという。そこでネクサンが投入したのが、複数のネクサンストレージを配下で管理し、さまざまなソリューションを実現する「Nexsan iSeries」というアプライアンスだ。

親亀・子亀のようにSASBeastの上に載っているのがiSeriesアプライアンス

 iSeriesを導入することで、複数台によるクラスタ構成や複数ボリュームへの同時書き込み(ミラードボリューム)、最大32世代のスナップショット、同期・非同期のレプリケーションなどの機能が実現される。その他、RAIDボリュームからサブディスクを切り出すLUNカービング、I/Oを分散して高速化するストライピング、オンラインでのデータ移行まで可能。こうした各種の機能を使いこなすためのGUIの集中管理ツールも用意された。

藤武氏にはiSeriesやSASbeastなどを使ったデモも見せてもらった。Beastなだけあって、起動時の動作音はかなりすごかった

 iSeriesは最大500TBの「200i」と最大1PBまでカバーする「400i」が用意される。パフォーマンスに関しても、Boy/BeastともにRAIDコントローラを複数持てるので、台数が増えることによるパフォーマンスの劣化はないとのことだ。

 ディスクアレイ装置製品としては優秀だったものの、ストレージソリューションという点では、これまで同社は周回遅れだったといえるかもしれない。しかしiSeriesの登場で、一気にトップ集団に追いついたイメージである。他社に比べ廉価なコスト面での優位性も含め、今後注目したいストレージベンダーであることは間違いない。

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