炎上から見えるもの
炎上は批判的な意見が殺到するだけではない奥深い現象であると言えます。
例えば、一個人の発言が新たな仲間を呼び、さらに大きな声に拡大していく炎上は、従来一個人では対抗しにくかった大企業や政治に対して影響を与えることができる。これは今までには無かった現象です。ネットにおける市民運動の初期の姿なのかもしれません。
炎上発生の原因はいくつかありますが、靖国問題や、亀田興毅のボクシングの試合判定など、ブログ上で微妙な話に触れることによって発生する炎上からは、今、世間がどんなことに興味を持っていて、どんな世論が存在しているのか? そしてそれらの世論はどのように分かれ、あるいは衝突しているのかを知ることができます。また、炎上の中には、コメントの中でユーザー同士がぶつかり合い、どちらかの意見が排除される自浄作用が起きる場合もあります。
炎上を注意深く見ることは、その時代の世論を知ることにも繋がるのです。
炎上の結末
さまざまな炎上が発生していますが、その結果どうなるかは、次の3パターンに分けられます。
ブログの状況と特徴
- 小火(ぼや)
- 炎上してもすぐに鎮火し、再び元の状態に戻るもの。管理人の対応が素早く適切であったために炎上は鎮火し、場合によっては炎上以前よりもそのブログの閲覧者を増やすものもあります。
- 半焼
- 炎上した結果、コメントやトラックバックを閉じて、一方的な情報配信のサイトとなるもの。ブログに批判的な意見を書かれたくないために、コメントやトラックバック自体を閉じてしまうという対応です。これは、ブログやSNSのメリットである双方向性を捨ててしまうことでもあり、ホームページで情報を発信するのと変わらないので、ブログやSNSを利用する意味が半減してしまいます。
- 全焼
- 炎上に管理人が耐えられなくなり、閉鎖してしまうもの。ブログやSNSを閉鎖したからといって、炎上は終わるわけではありません。書かれたものは Googleのキャッシュに残り(Google自体のサーバに記録が残っており、閲覧できてしまう状況)それが、他のサイトに転載されるなど別の方法により批判が殺到する場合もあります。
炎上を恐れない
ブログやSNSで情報発信をしたいと考える人は、「なぜ炎上が起こるのか?」というメカニズムを理解することで、ネットの向こう側に存在する膨大な数のユーザーと良好な関係を築き、より安全に運営するだけでなく、時には強い味方に付けることができます。
本連載では、毎回炎上の事例を上げながら考察し、これらの原因や対処方法について述べていく予定です。
著者・伊地知 晋一(いじち しんいち)プロフィール
株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ専務取締役。 1968年生まれ。e-mailを活用したマーケティング会社を経て、2000年ライブドア(当時オン・ザ・エッジ)へ入社。執行役員として2003年「ライブドアブログ」をスタートさせ、国内最大のブログサービスに育て上げる。その後、2年半の間に「やわらか戦車」のプロデュースを行なうなど、50以上のネットサービスを手がける。著書に『CGMマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ)がある。
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