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実例に学ぶ ブログ炎上 第8回

もしも類焼してしまったら

2007年01月01日 00時00分更新

文● 伊地知晋一

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どんなに炎上しないように注意を払っていても、不可抗力で炎上してしまうことがあります。炎上しているブログと混同され、まったく関係のないブログが燃えてしまう、「類焼」という現象です。しかし、不幸にして類焼が起きても、慌てる必要はまったくありません。誤解であることが分かればすぐに鎮火しますし、鎮火後はむしろ訪問者が増えるというメリットも生まれます。ですが対応を間違えれば、本当に炎上する危険性もあります。類焼という禍を福に転じられるかどうかは、冷静に対応できるかどうかにかかっています。

別のブロガーと混同され類焼

 2006年11月、女子大生ブロガーである坊農さやかさんのブログが炎上しました。企業からお金や試供品をもらってブログを書いていることをNHKのニュースで紹介されたことがきっかけです(当連載第2回「やらせ系ブログの炎上」参照)。実はこのとき、坊農さんとはまったく関係のない人のブログも炎上していたのです。

 女子大生にして芸能プロダクションの社長でもある黒田美帆さんのブログ「現役女子大生芸能プロ社長の日記」です。黒田さんのブログは商品や飲食店などに関する意見は記載していましたが、坊農さんが批判されたようなお金や試供品をもらっての宣伝は原則として行なっていませんでした。しかしながら、黒田さんの会社が契約したブロガーを使って企業や商品のPRをするブログ関連事業を手がけていたこともあり、「女子大生」「ブログ」「商品」といった共通点から坊農さんのブログと混同されたのです。

 また、こんな事例もあります。

 2006年9月9日、Jリーグの横浜Fマリノスと川崎フロンターレの試合会場で、自民党の議員や支持者らが党名の記されたのぼりをたて、党名が書かれたうちわを持って観戦したことで、スポーツの世界に政治を持ち込んだと批判を浴びました。このとき、自民党の神奈川県議である、しきだ博昭氏のブログも炎上しましたが、実際にはしきだ議員は批判を受けるような行為はしていませんでした。たまたまブログに横浜Fマリノスのグッズを持ち、党名が書かれたブルーのシャツを着た集合写真を掲載していたことや、「横浜」「自民党」「議員」といった共通項があったため、類焼することになってしまいました。

 2つの類焼は、たまたま批判の対象と共通項が多かったため、googleのキーワード検索で上位にランクされたりしたことが原因で発生しています。

類焼しても冷静な対応を

 類焼は誤解によって生じる炎上ですので、通常は2~3日もすれば鎮火するものです。しかし対応を間違うと、本当の炎上に発展してしまう可能性もあります。

 早期に鎮火させるには、まずは自分のブログの炎上が類焼であるということを認識する必要があります。そのためにも、殺到したコメントに対して慌てて何らかのリアクションをとる前に、ひとまず寄せられたコメントの内容を冷静に分析しましょう。身に覚えのない批判ばかりで類焼の可能性が高いと分かれば、本当に炎上しているサイトを検索してみることをお勧めします。

 類焼だと分かった場合に最もやってはいけないのは、本当に批判の対象となった人の立場を擁護するようなコメントを記載することです。今度は自分のブログが炎上することになりかねません。かといって、「自分とは無関係です」と突き放してしまう行為も得策とはいえません。炎上したことに触れず普段どおりにブログを淡々と続けるか、せめて批判の矛先が間違っていると指摘する程度に留めておきましょう。それでも炎上が長引くようであれば、本来の批判の対象となっているブログのURLを調べて自分のブログで紹介するのも1つの手です。

 今回紹介した2人のブログも類焼後の対応が適切であったため、早期に鎮火しました。黒田さんの場合、緊急措置としてコメント欄を管理者の承認後にアップする設定に変更したうえで、炎上した翌朝の11月4日、過去の自分が記したコメントを引用しながら、ブログと宣伝に関する自身の考えを説明しました。

 しきだ氏も同様に9月23日付で「去る9月9日のサッカー観戦について」と題し、「自民党の所属議員として、まず、お詫びしたい」と断ったうえで自らが批判にあたる行為に関わっていないことを記載しました。

 そもそもブログが類焼することは忌避すべきことではありません。誤解によって寄せられたコメントなど、そのうち埋もれて消えていくものです。なんの苦労もせずに偶然の誤解でブログへの訪問者が増えるのですから、むしろラッキーだと考えるべきです。もちろん、対応には慎重を期す必要はありますが、うまく鎮火できれば訪問常連客が増えるでしょう。まさに「禍を転じて福となす」と言えます。

著者・伊地知 晋一(いじち しんいち)プロフィール

伊地知氏

伊地知氏写真

株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ専務取締役。 1968年生まれ。e-mailを活用したマーケティング会社を経て、2000年ライブドア(当時オン・ザ・エッジ)へ入社。執行役員として2003年「ライブドアブログ」をスタートさせ、国内最大のブログサービスに育て上げる。その後、2年半の間に「やわらか戦車」のプロデュースを行なうなど、50以上のネットサービスを手がける。著書に『CGMマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ)がある。


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