日本アイ・ビー・エムは、RDBMSの新バージョン「DB2 9.7」を発表した。高止まりするデータベースの運用管理コストを下げるため、パフォーマンス向上や機能面の見直しなどを図っている。
コスト削減を主軸に据えるDB2の新版
今回発表されたIBM DB2の最新バージョン9.7では、厳しい経済状況を鑑み、運用コストの低減をコンセプトに据えた。これは新規サーバの投資コストがあまり増えていないのに、運用コストや電力・冷却のコストが拡大しているという現状があるためだ。そのため、管理者の運用やチューニングの手間を減らし、リソースの効率的な活用を進め、セキュリティや信頼性をレベルアップすることで、コストを削減するという提案を進めていく。
具体的な新機能としては、バージョン8からの特徴であるオートノミック機能を強化している。チューニングやバックアップなどの操作を可能な限り自動化することで、運用管理のコストを下げる。
また、運用コストを30パーセント下げるといわれるデータ圧縮を強化。圧縮によってまずディスク容量が削減でき、サイズが小さくなることで、ディスクアクセスが少なくなる。そのため、パフォーマンスがよくなるほか、バックアップやリカバリ時間も短縮することが可能になる。「あるプロジェクトでストレージの削減コストを試算したところ、25TBのデータが約60パーセントに削減された。10TBのストレージの削減分を考えると、1億円のコスト削減につながった」(日本IBM インフォメーション・マネジメント事業部長 下垣典弘氏)とデータ圧縮の効果をアピール。9.7では新しい独自アルゴリズムの導入で、圧縮効果をより向上させているという。
パフォーマンスもオラクルやSQL Serverに比べて高いパフォーマンスを実現。TPC-Cのパフォーマンスベンチマークの値や顧客のコメントを元に「競合のデータベースに比べて、50%から5倍高速で、低価格なサーバでも十分なパフォーマンスが出る」(日本IBM ソフトウェア エバンジェリスト 中林紀彦氏)と述べている。また、DB2の特徴の1つであった信頼性もきちんと確保。テーブルや列の名前の変更、あるいはデータの移動もノンストップで行なえるようになった。さらに新たにVMware用の仮想サーバ単位のライセンスを提供する。
PL/SQL対応で既存DBスキルを活かせる
そして、今回もっとも一番売りなのが、使い勝手。標準SQLに加え、本バージョンではオラクルの手続き言語であるPL/SQLをサポートする。これにより、オラクルDBからの移行を促進しつつ、既存のデータベーススキルをそのまま利用できる。また、データ型もANSI SQL標準の厳密なデータ型のほか、昨今のプログラミングで用いられる緩やかなデータ型をサポートする。その他、データウェアハウスでのXMLデータ活用を容易にするための機能が持ち込まれている。
今回のDB2 9.7では「Unbreakable」を掲げるオラクルに対して、「Break Free~高いデータベースコストから開放~」をテーマに掲げる。前述したさまざまな特徴やライセンスの効果により、コストに関しては保守費用等も含めると、競合製品に比べて、5年間でコストは約半分になるという試算をしている。出荷は8月28日を予定しており、参考価格は以下の通りとなっている。
エディション | 価格(税別) | 備考 |
---|---|---|
DB2 Express Edition | 61万8500円 | 4GB以下のメモリ | <
DB2 Workgroup Server Edition | 143万7000円 | 16GB以下のメモリ |
DB2 Enterprise Server Edition | 461万7000円 | メモリ制限なし |
初出時、中林紀彦氏の名前を誤って中村紀彦氏と記載しておりました。お詫びして訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2009年5月22日)