次世代発電界のインテルを目指す
その後、速水氏は修士課程に進学して、株式会社音力発電を起業した。常勤社員は速水氏を含めて5人と小さい会社だが、慶應藤沢イノベーションビレッジの支援を受けながら、未来に描く夢は大きい。現在もユビキタス関連の通信機器に自社製品を搭載する実験や、電池のいらないリモコンをNECエレクトロニクスと共同開発しているという。
桜子 音や振動で発電ができるのは確かに素晴らしいと思うのですが、その一方で現状として、火力発電や原子力発電の方がコスト面では圧倒的に低いですよね。
速水 もちろんそのとおりです。ただ、火力発電は2050年になったら使えなくなるだろう、と一般的に言われています。そのために、我々は代替エネルギーを準備しておこうとしているんです。
速水氏がこのように発言する背景には、経済産業省が昨秋発足させた『2050研究会』がある。2050研究会とは、地球のCO2排出量を半減させるという世界的な課題に対し、日本がいかに取り組むかということを検討する会合だ。ちなみに2050年には世界人口が今よりも30億人増加すると予想されている。
速水 我々はこの研究会に参画しています。現在CO2半減を実現するためのエネルギーの主力は太陽光と風力だと言われています。ただ、それでは100%賄うことはできない。 賄えると主張する人もいますが、私は難しいと考える。ならば地熱だという案もありますが、それでは設置場所が限定されてしまう。そこで音はまだ難しくても、振動なら大丈夫だと思っているんです
桜子 今の段階で、速水社長が一番、企業に訴えたいことは何ですか。
速水 弊社で開発した「振力電池(R)」(振動をエネルギーにして電力を発する電池)を色々なところで使ってもらいたいです。「発電床(R)」という振動に反応して床が光る機械を発明しましたが、その中に発電装置があり、そこに入っているのが「振力電池(R)」です。
「振力電池(R)」があれば、携帯、靴、パソコン、カバンに搭載して始終バッテリー利用させたり、エネルギー転換するなどさまざまなな分野に使えます。必要な時に取り出して通勤通学で使える、と提案しているんです。パソコンで言うとインテルのCPUのように、あらゆる機器や道具に搭載されるイメージを考えています。
桜子 インテルのCMの「インテル入ってる?」じゃなくて、「振力入ってる?」みたいな?
速水 そうです、そうです(笑)
桜子 夢が膨らみますね!
速水 「振力電池(R)」にもさまざまなスペックがあって、たとえば人の指で押した力と、自動車の重さによる反応では、発電回路が異なる。だから耐久性の実験が必要なんです。ぜひとも「振力電池(R)」を使った商品の検討を、この記事をご覧になる方も含めてアピールしたいです。
この研究を続ける上で、絶えず付きまとう課題は発電効率の向上だ。現在の「振力電池(R)」は3cm平方と1cm平方の2種類のデバイスがあるが、もっと小さくして高密度化に力を上げたいと語る。
桜子 資金面の課題はありますか。
速水 弊社は基本的に受託開発です。ただ、自社製品の「振力電池(R)」のように、コア技術は今後も力を入れて自社で開発する必要があるので、受託開発で得た利益と我々の資金でまかなって力を入れたいなと考えています。もし可能なら、国の補助や助成金の活用を視野に入れ、応用製品の開発を加速させたいですね。
桜子 御社の株を買いたいと言う人が結構いませんか(笑)。
速水 いますけども、まだ株式公開していないので(笑)。ただ一般の方に支持され応援される技術が育っていく企業だといいな、とは感じています。
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