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【INTERVIEW】失敗できない、だから難しい──“EOS Kiss Digital X”開発者に聞く

2006年10月23日 15時26分更新

文● 聞き手 小林 伸、撮影 岡田清孝

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[――] “絵作り”に関しても聞かせてください
画像設計担当の杉森氏
画像設計を担当した杉森正已氏
[杉森] これはEOSの歴史を振り返っていただくと明確になることなのですが、当初はプロ向けの機種とエントリー向けで絵作りを変えていました。しかし、『EOS 5D』を皮切りに“ピクチャースタイル”という全機種で同じ絵作りを割り当られる仕組みの導入を進めています。これは、デジタルフィルムのコンセプトといいますか、フィルムを交換するように、絵作りを選べる機能です。今回Kissにも初めて、ピクチャースタイルが入りました。設定に関しても、SETボタンを押すとすぐピクチャースタイルに飛べるようにして、操作しやすくしています。
[――] EOS 5Dはハイアマチュア向けの機種になると思うのですが。
[杉森] 実は、ピクチャースタイルのデフォルトになっている“スタンダード”は、初代Kiss Digitalにあった“パラメータ1”なんです。非常に評判がよく、EOS 1D系のユーザーからもどうしてこの色が出ないんだというご指摘を受けたぐらいです。
[――] ピクチャースタイルでは、通常の彩度/コントラスト/シャープネスでは調整できないような効果が得られるのでしょうか?
[杉森] 風景など、シチュエーションに合わせた専用の画像特性を用意してあります。これらには通常の設定だけでは出せない、ドラスティックな変化が出るようなチューニングを行なっています。
[──] ノイズ低減に関しては、どのようなスタンスを取っていますか?
[杉森] 根元から断つと言いますか、基本はやはりCMOSイメージセンサーの段階で対策を行なわなければならないと考えています。また、アプリケーションとの連携も強化しています。付属ソフトの『Digital Photo Professional 2.2』(以下DPP 2.2)では“ダストデリートデータ”の情報を利用して、パソコン側のソフトでごみを除去できる機能を付けています。また、DPP 2.2においては、ノイズリダクションをRAW形式とJPEG形式のどちらのデータにも掛けられるようにしました。ノイズ除去に関しては、解像度や階調性確保とのトレードオフという面もあり、お客様の選択肢を広げるために、今回アプリケーションで対応するようにしました。




究極の“快速・快適・高画質”に近づくための地道な改善

[――] 技術サイドで、これ以外にアピールすべき点はありますか?
構造に関して説明する戸倉氏
内部の構造に関して説明する戸倉氏
[戸倉] コンセプトの話に戻るのですが、EOSは“快速・快適”という部分をフィルムカメラの時代から推し進めてきました。これがデジタルに変わることで“高画質”という部分も意識しなければならなくなった。この“快速・快適・高画質”がEOS Digitalシリーズの3本柱ですが、Kissの場合、これに小型軽量というフィーチャーが付いてくるんですね。EOS Kiss Digital Xに関してもベースはそれなんですよ。それに対して、先代のモデルが満足していなかった部分をすべてブラッシュアップしていくというやり方です。

その中で、要望の高かったことを逐一改善していく。背面の液晶パネルは大画面とするし、高画素化の要求もまだまだ高いという認識ですからセンサーも当然いいものを用意する。あとは、10メガを支えるためにAFの改善も行ないました。9点AFにして、精度を高めた。上位クラスのユニットを搭載して、中央部分のAF精度を絞りF2.8相当まで高めています。あとは、ピクチャースタイルというキヤノンの考える絵作りをスタンダード機にも載せて、活用してもらいたいと考えています。そして、ごみ取りです。この機能により、ほこりを気にせず交換レンズを楽しんでもらえる。

突出したところを狙うというよりは、今挙げた5つの柱を支え合って、普及クラスの標準機として作り込んだのがEOS Kiss Digital Xだと思っています。
[――] バランスを重視しつつ、不満のあった部分を地道に潰していったのがEOS Kiss Digital Xということですね。
[戸倉] そうですね。作り手側としては、この価格で楽しんでいただきたいので、コストバランスも十分考えました。しかしこの価格達成は非常にハードルが高く、開発現場ではいつもバランスを失いかけていましたが。


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