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【特別企画】韓国市民記者ビジネスを追うVol.1――オーマイニュース

2006年01月13日 23時10分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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11人のデスクが1日約150~200本の記事を校正

[編集部] インターネットの影響力については、ニュースを発信するオーマイニュース側も相当の気を使い、市民記者の記事の校正には相当努力を払っていると思います。社内の体制と、1日何本くらいの投稿があってそのうち何割くらいが掲載されているのか教えてください。
韓国滞在中に遭遇したデモ隊
[ソウルの風景]韓国滞在中に遭遇したデモ隊。何を主張していたかは分からない
[ソン氏] 職業記者の記事とは別に、1日約150~200本、市民記者の記事を載せています。市民記者が投稿する記事は、現時点での実績として、80%が採用されています。内部には、市民記者の記事を検証したり編集したりするデスクが11名います。記事の検証は、まず事実関係を確認して、この人が言っていることは妥当なのか検討します。また、この市民記者がなぜこのような記事を投稿したのか、背景を調べます。事実関係に間違いがある場合はそれをハッキリさせた上で、文章に問題があったり主張が妥当ではなかったりする場合は市民記者にアドバイスをします。記事として価値はあるけれど、書き方に問題がある場合は、内部の専門記者が追加取材をして記事を完成させることもあります。
[編集部] 1人のデスクが1日10本以上の市民記者からの記事を査読していることになりますが、印象として相当の作業量ですね。例えば、市民記者を駆け出しのライターに置き換えて考えてみると、1日の労働時間内で内容の濃い記事5本は校正できません。
[ソン氏] この仕事は労働の密度が高いですね。記事の査読には、大きなストレスを感じます。我々は弁護士の諮問まで受けています。その理由は、丁寧に検証をして記事を採用して、掲載後に記事に問題が見つかった場合、自分や会社に戻ってくる打撃というのは計り知れない大きさなのです。

もちろん、担当する10本の記事すべてがハードな内容であることはなく、映画の批評であるとか旅行記であるとかソフトなものも含まれています。労働的にはものすごく大変ということはないです。
[編集部] ちなみにデスクの方は1日何時間働いていますか。
[ソン氏] 法律で定められた労働の時間内、8時間勤務を守ろうとしていますが10時間くらいになります。集中力を要求される仕事なので8時間以内に収めようと努力しています。
[編集部] デスクの方は記者の経験がどのくらいあるのでしょうか。
[ソン氏] 記者出身が3分の2くらい、記者の経験がない人が3分の1くらいです。校正の訓練はさせますよ、もちろん。しかし、オーマイニュースのような仕事はまったく新しいものなので、前職が職業記者であったとしても皆が初心者ということになります。特殊な仕事ですが、基本的な記事のルールさえ分かっていれば、誰でもできると思います。

それに、担当をしているのは市民記者として活躍していたスタッフです。市民記者を自分も経験しているので、市民記者の立場になってアドバイスできるので、よりいいと思います。


大きな問題がなければ何でも掲載

[編集部] 市民記者の記事の採用方針を教えてください。
[ソン氏] 事実誤認や名誉毀損、文章が稚拙すぎたりと大きな問題がなければ、何でも掲載しています。
[編集部] インターネットでの論調は過激になりがちですが、そういった傾向はありませんか。
[ソン氏] “過激な”とは、どういったことでしょう。私も最初はそういった心配がありました。市民記者がどのくらいのレベルのものを書いてくるのかとか、どうやってそれを精査するかとか。オーマイニュースは失敗するという噂もありました。しかし、実際始まってみると、市民記者の記事は、事実関係を明白にしようと努力をした形跡が見られて、理論整然としています。
[編集部] 感情的な投稿はありませんか。
[ソン氏] 感情的な文章は採択されず、どうして採用されなかったのか理由を教えます。そうすると、その市民記者からは次回は理論的なものが送られます。教えてあげたから直ったんだと思います。1回2回投稿して、採用されなかったからやめてしまう人がほとんどです。

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