それでは最近のニュースの中から、ポータブルビデオプレーヤーに関する話題をピックアップしてみよう。
ついに登場した“ビデオiPod”!
10月13日に発表された第5世代iPod。待望のビデオ再生機能を搭載し、発売後もたちまち売り切れ続出の人気を博している |
ポータブルビデオプレーヤーの話題といえば、何を置いてもまず“ビデオiPod”を取り上げなくてはなるまい。10月12日(現地時間)に米国で開かれたイベントで発表されたビデオiPodは、「iPod nano」のような“バリエーションのひとつ”という形ではなく、第5世代“iPod”として、メインストリーム製品の後継機種という位置づけで登場した。HDD内蔵型で記憶容量は30GBか60GB、2.5インチのQVGA液晶パネルを搭載している。対応するビデオフォーマットはH.264またはMPEG-4ビデオ(シンプルプロファイル)。価格は30GBモデルが3万4800円、60GBモデルが4万6800円となっている。
日本では10月20日から販売が開始されたが、“予約分で完売”“入荷後数時間で完売”など、まさに飛ぶような売れ行き。前世代機と比べて本体サイズも薄くなるなど、物としての魅力も高まっているだけに、売れるのは当然と言っても過言ではない。
ビデオiPodの登場と同時に、有料ビデオ配信も開始したITMS |
しかしビデオiPod登場で真に重要なのは、ハードウェアがビデオ再生に対応しただけでなく、動画コンテンツの配信サービスも同時に展開されている点だ。パソコン用のジュークボックスソフト「iTunes」がビデオ配信サービスに対応し、有料コンテンツ配信サービスの“iTunes Music Store(iTMS)”で提供される有料のミュージックビデオや短編映画などを、パソコンにダウンロードして楽しむことができる。米国ではさらに“TV Show”と呼ばれるサービスも行なわれ、現在放送中の人気TVドラマなどが、CM抜きで有料配信されている。iPodとITMSでポータブルオーディオプレーヤー業界を制したコンビが、ビデオiPodでいち早くポータブルビデオプレーヤーの世界をも制しにかかったわけである。
日本国内では今のところ、iTMSに抗しうるような映像配信サービスは存在しない。コンテンツにまつわる著作権の権利処理の複雑さと、放送事業者側の重い腰で、今のところはまったくパッとしない日本の映像配信サービスだが、ビデオiPodとiTMSの強力タッグは、こうした日本の状況にも風穴を開けるだろうか? 今後の動きに注目したい。
普及から定着へ アップデートで機能を向上させる“PSP”
9月に発売されたPSPの“セラミック・ホワイト”「PSP-1000 KCW」 |
ゲームから音楽、ビデオまで。すべてのエンターテイメントを1つの機械で楽しめるのが、ソニー・コンピュータエンタテインメントのPSPだ。今年10月には日本とアジア諸国で300万台。全世界では1000万台の出荷を達成するなど、好調な販売ぶりを見せている。PSPは当初より、“ビデオ用UMD”(リムーバブルメディア)やメモリースティックDuoに記録したMPEG-4ビデオなど、ビデオコンテンツの再生も可能な“ポータブルビデオプレーヤー”としての側面を大きくアピールしていた。ビデオ用UMDについては、北米では7月の発表時点ですでに430万枚も出荷されているというが、日本ではむしろ自分で録画したTV番組などをメモリースティックDuoに記録して、PSPで再生するといった使われ方の方が一般的のようだ。最近のビデオ編集ソフトでは、PSPで再生可能なMPEG-4書き出し機能を持つのが当たり前になりつつある。例えば(株)ネロの「Nero 7 Premium」では、「Nero Recode 2 featuring Nero Digital」でPSP対応のMPEG-4などを作成できる。
PSP自体のシステムソフトウェア(OS)もバージョンアップを重ねて、現在では無線LAN経由でインターネットに接続し、ウェブサイトを閲覧できる機能を備えた。またPSP専用のビデオコンテンツを配信するサイト“Portable TV”のサービスも開始されている。さらにはソニーが公開しているPSP用ソフト「ロケーションフリープレイヤー」と、無線LAN対応TVチューナーユニット「ロケーションフリーベースステーションパック LF-PK1」を組み合わせることで、無線LAN経由で自宅のTVやHDD/DVDレコーダー内のコンテンツを、手元のPSPで楽しめるようになっている。
無線LANでつながったパソコンやPSPをTVモニターに変える「ロケーションフリーベースステーションパック LF-PK1」 | Portable TVは、PSP用にデザインされたウェブサイトから、MPEG-4ビデオコンテンツを配信するサービスである |
TVキャプチャーカードやHDD/DVDレコーダーそのものが、PSP対応のMPEG-4を作成する機能を備える例も増えつつある。例えばソニーのHDD/DVDレコーダー“スゴ録”シリーズでは、「RDR-AX75」が、録画した番組をPSP対応MPEG-4に変換する“おでかけ・スゴ録”機能を搭載している。PlayStation 2とHDD/DVDレコーダーを一体化した“PSX”シリーズも、「DESR-7700/5700」でメモリースティックDuoへのMPEG-4変換出力機能を備えている。また(株)フジワークが発表したビデオレコーダー「PvrAlex」(ピーブイアール アレックス)は、HDDや記録型DVDドライブを搭載しない代わりに、メモリースティックDuoに直接H.264形式の録画を行なうという、異色の製品となっている。PSPと組み合わせて使うことを前提とした製品と言えよう。
スゴ録「RDR-AX75」 | PSX「DESR-7700/5700」 | |
PSP用MPEG-4の書き出し機能を備えるソニーのHDD/DVDレコーダー |
パソコン用のTVキャプチャーカードでは、(株)アイ・オー・データ機器が11月下旬に発売する「GV-MVP/GX2」「GV-MVP/GX2W」が、エンコーダチップのハードウェアにより、PSPやiPodに対応したMPEG-4でのTV録画を可能にしている。これを使えば、PSPでビデオ視聴をする際のネックである“パソコン上での変換作業”は不要になる。PSPやiPodでTV番組を見ているユーザーなら、思わず欲しくなるアイテムだ。
MPEG-2とMPEG-4での同時録画が可能なTVキャプチャーカード「GV-MVP/GX2」 |