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「ビデオ再生機能は音楽プレーヤーとして洗練させていく延長線上で生まれた」──新iPod担当者インタビュー(その2)

2005年10月13日 23時38分更新

文● 林 信行

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スタン・イング(Stan Ng)氏
プロダクトマーケティングiPod担当ディレクターのスタン・イング(Stan Ng)氏
[林] それではiPodに質問を移しましょう。以前、御社は動画コンテンツを携帯することに懐疑的な姿勢を示していましたが、それがどう変わったのでしょう。人々は実際に手に持ったiPodで1時間のドラマを見ると思いますか?
[イング] ええ。例えばちょっとした待ち時間や、公共の乗り物に乗っている移動時間とかを使って、ピクサー社が提供するショートフィルムやTVドラマ、それからホームビデオといったコンテンツだったら見るんじゃないかと思います。

私が特に強調したいのは、ホームビデオを見る、という使い方ですね。実際に私もやっていますが、田舎に帰ったときに、iPodをテレビにつないで、自分の祖父母に娘の日々の生活ぶりを撮影したビデオを見せる。実際にやってみるとわかりますが、これがかなりいいんですよ。 iPodはそもそも最高の音楽プレーヤーを目指してきた製品です。ビデオ機能というのは、この音楽プレーヤーを洗練させていく延長線上で、ある意味、ボーナスのような形で追加された機能だと思っています。我々は音楽の楽しさをさらに深めたいと考える中、音楽ビデオクリップをiPodで楽しめるようにしたい、と思うようになりました。他の携帯型ビデオプレーヤーのように、“動画プレーヤーをつくる”という発想が出発点ではないのです。

とりあえず、音楽の楽しさもっと味わってもらうために、音楽ビデオ再生機能を追加し、本体を30%薄くし、容量も50%増にしてみたら……なんと、TVドラマまで見られるようになってしまった、と。
画面イメージ
iTunes Music Store日本版でも、U2などのミュージックビデオが1曲あたり300円で販売されている
[林] ところで、iTunes Music Storeで音楽ビデオを購入した場合に入手できるのはビデオクリップだけなんでしょうか。それともAACで圧縮された高音質な曲ファイルも一緒に入手できるんですか?
[イング] iTunes Music Storeで購入するビデオには、映像トラックに加え、AACコーデックを使った高音質な音声トラックも用意されています。なので、ユーザーはポケットの中で再生され続けている映像を気にせず、音楽ビデオとして再生されている曲を楽しむことができます。今のところiPodの側で、映像部分と音声を分離したりとかそういった機能はありません[注:つまり、楽曲をプレイリストに組み込むなど通常の用途として楽しむには、別途購入する必要がある]。
[林] ビデオを再生した場合は、バッテリー消費も激しくなるんでしょうね。
[イング] そうですね。動画再生時のバッテリー駆動時間は30GBモデルで最長2時間、60GBモデルで最長3時間です。[注:音楽再生時はそれぞれ14時間/20時間]。
[林] ところで発表ではMPEG-4をサポートと言っていましたが、これはMPEG-4 Simple Profileのことですか?
[イング] はい。H.264と、MPEG-4のLow ComplexityのSimple Profile。320×240ドット、毎秒30フレーム(fps)です。
[林] 今朝、いくつかのブログを見ていたら、iPodビデオの登場で、自分の動画コレクションを新しいiPodで楽しむには圧縮し直さなければならない、といった意見をみかけました。
[イング] 我々はオープンな業界標準技術を使っているので、あらかじめiPod用に最適化した動画なら、いろいろと使い回しもきくと思います。今回、このiTunesやiPodに合わせてリリースしたQuickTime 7.0.3で開ける動画形式なら、ほとんどのものは“書き出し”メニューを使って、業界標準のH.264形式に変換できます[注:ファイルの書き出し機能を利用するにはPro版にアップグレードする必要がある]。
[林] アップルの製品は、ハードとソフトの調和が素晴らしいと思いますが、これはいったいどうやって生み出されているものなんですか?
[イング] 私が語れるのはiPodとiTunesについてですが、我々の開発チームでは、最初からソフトの開発チームも、ハードの開発チームも、iTunes Music Storeのサービスの開発チームも皆、一緒になって仕事をしています。それぞれのチーム内で、どういったハード機能がソフト機能のどんな足りない部分を補えるのか、その逆はどうであるか、あるいはサービスで補える部分はあるのかなど、常に綿密な話し合いを行なっています。

目指しているのは、ユーザーにとって分かりやすく、使いやすい、シンプルなソリューションです。同じソフトで同じ要領で音楽や音楽ビデオを購入。さらにはケーブルをさすだけで、ファイルがどこにあるかなんか気にせずに、音楽も音楽ビデオも自動的に転送――こういったiPodとiTunesのよさは、開発者間の密接な協力があったからこそ生み出されたものだと思います。

日本のiTunes Music Storeでは、開始後たった4日で100万曲も売り上げました。でも、それに負けずに商品としてのiPodもよく売れています。iPod nanoは、わずか17日間で100万台です。これはやはりハードが優秀とかソフトが優秀というのではなく、そのどちらの面からみてもよくできているからではないでしょうか。
[林] 今回、ディズニーやABCと交渉をしたのは、iTunes Music Store部隊の方々でしょうか。
[イング] そうです。iTunes Music Storeで販売されるものは、すべてこの部隊で扱います。


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