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スピーシーズ、世界初の燃料電池駆動本格的二足歩行型ロボット『Speecys-FC』を発表

2005年06月28日 21時45分更新

文● 編集部 小西利明

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燃料電池で駆動し、二足歩行を行なうロボット『Speecys-FC』 スピーシーズ 代表取締役の春日知昭氏とSpeecys-FC。身長は約50cm、重量約4.2kg
燃料電池で駆動し、二足歩行を行なうロボット『Speecys-FC』スピーシーズ 代表取締役の春日知昭氏とSpeecys-FC。身長は約50cm、重量約4.2kg

スピーシーズ(株)は28日、燃料電池で駆動する二足歩行ロボット『Speecys-FC』を開発、7月1日に受注開始すると発表した。燃料電池で駆動する本格的な二足歩行ロボットとしては、世界初としている。受注生産により販売され、価格は262万5000円。研究用途や展示用としての販売を見込んでいる。

Speecys-FCは同社がすでに発売している二足歩行ロボット『Speecys』をベースに、(株)エフシーアールアンドディ(FC R&D)の燃料電池システムをロボット用に最適化したロボット用複合燃料電池システム“CFCS”(Composite Fuel Cell System)を開発、これを搭載したロボットである。燃料となる水素は容量16リットルの水素吸蔵合金製ボンベ(約330g)として搭載する。発電用に燃料電池セルを複数段積み重ねた“メインスタック”を4基(搭載位置は両肩に2基ずつ)と、“アシストスタック”を1基(背面腰部)に装備している(各105g)。ベースとなるロボットはニッケル水素充電池で動くSpeecysとほぼ同一で、制御部(プロセッサユニット)には双葉電子工業(株)製の『RPU-100』、ロボット専用駆動用サーボには同『RS601CR』を使用している。OSはNetBSDベースの“Speecys OS”を使用する。関節構造は足部関節が6関節(片足分)、手は3関節、肩1関節となっている。

背面から見た様子。両肩に2つずつ、腰の裏側に1つのスタック(燃料電池セルの集合体)が装着されている 背面を別の角度から。背中には無線LANカードを装着したプロセッサユニットが搭載されている
背面から見た様子。両肩に2つずつ、腰の裏側に1つのスタック(燃料電池セルの集合体)が装着されている背面を別の角度から。背中には無線LANカードを装着したプロセッサユニットが搭載されている
ベースとなった二足歩行ロボット『Speecys』。フルキットで価格は52万2900円
Speecys-FC(右)と、兄弟機Speecys。ベースが同じなのでサイズはほぼ変わらないが、燃料電池関係の装備で、重量は500gほど増加している
Speecys-FC(右)と、兄弟機Speecys。ベースが同じなのでサイズはほぼ変わらないが、燃料電池関係の装備で、重量は500gほど増加している

同社代表取締役の春日知昭氏はSpeecys-FCが使用するCFCSについて、動作時の高負荷や電流変動に対応するために、メインスタックに加えてアシストスタックと小型ニッケル水素充電池を組み合わせることで、高出力化や出力電圧の安定化を達成したことが特徴であると述べた。ロボットが単に直立しているだけの姿勢であれば、必要な電流は1.5~1.8Aと少ないが、動き出した途端に大電流(最大で10A程度)が必要となる。しかし燃料電池単体では逆に瞬時に大電流を流すと、セル電圧が低下してしまい復活に時間がかかるなど、ロボットの特性と燃料電池の特性は相性が良くないという。そこでスタックの数やスタック内のセル数を最適化したうえで、大電流使用時にメインスタックよりセル数が1~2枚多いアシストスタックも使用し、さらにニッケル水素充電池を組み合わせて応答特性を向上することで、これらの問題点を克服しているという。

Speecys-FCに搭載されるロボット用複合燃料電池システム“CFCS”の仕組み。4基のメインスタックを充電池やアシストスタックと組み合わせることで、大電流消費や電圧安定化を実現しているという
Speecys-FCに搭載されるロボット用複合燃料電池システム“CFCS”の仕組み。4基のメインスタックを充電池やアシストスタックと組み合わせることで、大電流消費や電圧安定化を実現しているという
スタック本体。この中に水素を流し、フィン状の隙間から酸素を取り入れて反応、電気を作り出す スタック内部の構造と、各セルの拡大図
スタック本体。この中に水素を流し、フィン状の隙間から酸素を取り入れて反応、電気を作り出すスタック内部の構造と、各セルの拡大図

燃料には水素吸蔵合金製ボンベに吸蔵した水素を利用する。小型燃料電池と言えば、メタノールを燃料に使用するものを(株)東芝などがノートパソコン用に開発していたりするが、これらを使用する場合、ファンやドレーンといった部品も必要となり、重量増加につながる。そのためCFCSではこれらを使わず、直接水素を利用する固体高分子燃料電池セルを利用している。燃料ボンベは頭部に搭載し、ここからチューブで両肩や背面のスタックに水素を供給する。サイズの大きなボンベは頭部くらいにしか搭載できなかったため、Speecysが頭部に搭載していたマイクやスピーカーなどは装備していない。発電によって生じる水は、スタックの発熱により自然蒸発するという。CFCSの定格出力は9.6V、25W。水素の消費量は約2分で1リットルとのことで、動作の内容にもよるが、16リットルボンベで30分から1時間程度の連続動作が可能とのこと。セットには60リットル入りのボンベも付属し、60リットルボンベへの水素充填は同社に送り返して行なう(5000円程度)。

水素ボンベ(写真左)は大きいので、ロボットの頭部になかば無理矢理入れている ロボットに内蔵される16リットル入りボンベ(手前)と、付属品の60リットル入りボンベ(奥の背の高いボンベ)
水素ボンベ(写真左)は大きいので、ロボットの頭部になかば無理矢理入れているロボットに内蔵される16リットル入りボンベ(手前)と、付属品の60リットル入りボンベ(奥の背の高いボンベ)

価格は262万円で、使用の際にはソフトウェア開発キット(個人利用10万円、企業・団体利用20万円)が必要となる。春日氏は大学や研究機関、燃料電池メーカーなどにSpeecys-FCを購入してもらい、ロボットに適した燃料電池の研究開発などに利用してもらいたいと語った。

 
ロボットの動きを設定する“Motion Editer”

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